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魔王と始める世界革命  作者: 茜色蒲公英
3/22

部族と種別

パンドラとお風呂に入った翌日、私は城に住む準備をするために一度町に帰ることにした。


「大丈夫なのか?町の人に罵られたりしないか?」


「大丈夫だよ。荷物を取りに行ってくるだけだからそんなに怪しまれないって」


私のスキル『 超変化』により小さくしてある武器をいくつか返してもらい、バッグを背負い私は城を出た。


「行ってしまったな…本当に大丈夫だろうか」


「心配しすぎですよ。それより魔王様は早く浴場の魔法陣を書き換えてきてください。もうすぐ消える頃ですので」


「俺一人でやるの!?あれ皆でやるって話じゃなかったか!?」


「何か…言いましたか?ちょっと今何を言っているのか分かりませんでした」


「魔法陣が書きたくなってきたな!ちょっくら書いてくるぞ!」


城を出てから一時間歩いてから気づいた。


城までの地図を持ってくるのを忘れてしまった。


取りに行きたいが今私がいる場所は正しい道順で行かなければ同じ場所をループするという「迷いの樹海」。


更にこのまま町に戻ろうとしても看板ひとつない草原や森などが果てしなく続き町の近くに行くまで私は町がどこにあるのか分からない状態であるくことになる。


城へ戻るまで適当に歩くしか地図を手に入れる方法はない。そう考えた私はナイフで木に分かりやすい傷をつけて城へと戻り始めた。


城へ行くには五つの分かれ道がある。


一度でも間違えれば最初の道に戻ってしまい、間違えるごとに分かれ道の正解も変わってしまうので最初城へ訪れた時二日もかかったのはここのせい。


その時の道はひたすら右に進んで全部右が正解になるまで最初の場所に戻っていたが今回もそのやり方をすればいつかは着くだろう。


そう思い分かれ道を右へ、右へと進んでいくとすぐに森を抜けられ、目の前には掃除をしているメディがいた。


「おかえりなさい。随分と早いですね」


「いや、地図を持っていくのを忘れたから取りに来たんだけど…森で迷うかと思ったらそうでもなかった」


「そうでしたか。森については一度正解すると次からどの分かれ道でも正解になるので次来る時は適当に歩いていても森を抜けられますよ」


メディはベッドの上にそれらしきものがあったから机の上に置いたと言うので急いで向かうと地図は綺麗に畳まれ、もう一度城を出て今度こそ私は町に向かうことにした。


迷いの樹海を抜け、少し急いで草原を歩いていると私が城に向かう時にはいなかった鳥っぽい人間みたいな魔物のハーピィの群れがいた。


五匹程で人間を襲っている訳ではなく、草で見えないけど何かを興味深そうに見ているように見える。


討伐依頼が出ているわけではないし倒す理由もないので去ろうとしたがそうはいかなかった。


「人間ダ!人間ダヨ!」


「コレヲ聞クタメニ捕マエロー!」


上空から急下降して鋭い足で捕まえようとするハーピィ。


私はその足を掴み、そのまま数回転して山に向けて投げ飛ばした。


「コ、コイツ強イ!」


「町に行っていい?戦う気はないんだけど」


「待ッテクレ!捕マエナイカラコレダケ見テクレ!」


何やらただ事ではなさそうなので私は嫌々ながらもハーピィ達が気になっているものを見ることにした。


ハーピィ達に見せられたのはハーピィの焼死体。


一瞬にして魔法で焼かれたのだろうか全身が均等に焼かれている。


討伐依頼が出ていたのなら全身または首を持っていくはずだがこの死体は腹の部分が抉るように食われていた。


「コレ、人間ノ仕業ジャナイヨナ?」


「うん。ハーピィの肉は人間の肉って言われるほどまずいし腹が減って食べるにしては腹だけなのはおかしいね」


「ダロ。ソレガ聞キタカッタダケダカラモウ行ッテイイゾ」


「その死体どうするの?そのままじゃ可哀想だし埋めるならやっておくけど」


「ソウダナ…ナラ頼ンデイイカ?」


私はハーピィの死体を木の近くまで運び、大きくした剣を使って穴を掘り死体を埋めた。


「ドウシテココマデシテクレルンダ?」


「うーん…私にもよく分からない」


「変ナ子供ダナ!」


「えへへ〜」


手を振って私が投げ飛ばした仲間を探しに行ったハーピィ達。


私が投げ飛ばしたのはハーピィが住む山の方なので見つかるまでそう時間はかからないだろう。


それから歩いて町についたのはお昼頃だった。


少し町にいなかっただけなのに久しぶりに帰ってきた感じがする。


お金を貯めて買った古い家に入り、干し肉や釣竿など向こうで生活するのに必要そうなものをバッグに詰め込んで壊れそうなベッドに倒れる。


ここにはまた来るけれど、ここで寝ることはもうないのかと思うと少し寂しい。


ベッドから起き上がり、家から出ようとドアに手をかかけると外から誰かが入ってきた。


その人物は私が先生の所にいたとき、一緒に先生に勉強を教えてもらっていた『シンヤ』。


勉強を教えてもらっていた時に生意気だと喧嘩を売ってきては一発殴っただけで気絶していた貧弱な男である。


一緒に教えてもらってはいたもののシンヤの方が歳は上で今はほぼ大人みたいなもの。


私が冒険者になってから関わりはほとんどなかったのに何の用事なのだろうか。


「お前、魔王の討伐に行ってたんだろ。どうして帰って来れたんだ?」


「森で迷ったから引き返してきたの。数日はかかりそうだし森を抜けてすぐに戦って終わるならまだいいんだけどね」


「相変わらず余裕そうな言い方しやがって…ちっと強いからって調子に乗ってんじゃ…」


むかついたので言い終わる前に拳で壁に穴を開ける私。


「ドラゴン一匹に十人くらい連れてやっと倒せるような弱い人に言われることじゃないと思うけど?それじゃ、私はしばらく戻らないから町のことはよろしくね」


壁を殴った大きな音で視線が集まる中、私はすぐに町を出て干し肉を片手に城まで歩いて戻ることにした。


ここにいても他にやることはないし早く戻らないとメディが心配するだろう。


それにしてもあの未来を映す水晶は本物だったみたいで町にいるはずのない兵士を見かけたのはやはり私が魔王を倒したら私を殺すつもりだったのだろうか。


城に戻り「おかえりなさい」と出迎えてくれたメディは干し肉を途中で食べてきたと言ったのに「栄養が偏っては不健康になってしまいます」と食事部屋に行ってお昼ご飯を作ってくれた。


「魔王様ー、パンデモニウム、おじいさん、お昼ご飯ですよー」


近くにいる私くらいしか聞こえない普通の声でメディが他の皆を呼ぶとすぐさま食事部屋に三人が入ってきた。


「すごいね、何のスキル?」


「スキルではありませんよ、連絡系統の魔法でして城の庭と迷いの森の範囲まででしたら意識と声で会話することができるんです。特に詠唱する必要はなく頭の中で誰に連絡したいのかを思い浮かべて声に出すと頭の中で声が聞こえるようになっていますよ」


「城の中じゃ他に使ってる魔法が混み合ってて聞こえないんだがな。俺らが城の外で使ってること前提での魔法ってわけだ」


「へぇ、じゃあ後で使ってみるね!」


ご飯を食べ終えて本がたくさんある「読書室」で私はメディまた勉強を始めた。


今日は言葉の勉強で難しい言葉の意味と今の魔物と人間の科学と文化の進み具合についてお菓子を食べながら教えてもらった。


魔物は種族によって飲み食いせずに生きられる者が多いがそうでない種族にはきちんと文化があり特にオークやゴブリンといった人型の魔物は集落などを作って暮らしているという。


「ドラゴンのような大型でプライドの高い魔物は群れることなく誰とも共存することがありません。更に他の魔物や人間を襲うことも多く彼ら曰く自分は魔物というカテゴリーではなくドラゴンだと言っていますね」


「質問!ドラゴンって人間がつけた名前じゃないの?」


「いい質問ですね。百年以上前の話になってしまいますがドラゴンを最初みた人間はトカゲの化物だと言っていたのです。しかしドラゴンの方から自分はドラゴンという種族だと名乗ってきたのです。なので人間はどんな種類のドラゴンだろうがひとまとめにドラゴンと呼ぶようになったのです」


「だからこの前行ったドラゴン討伐のドラゴンは火じゃなくて寒い息を吐いてきたんだ…」


「例えば私はナーガですがナーガにも種類がありまして、私みたいに下半身が蛇であるナーガや下半身まで人間であるナーガもいます。なのでそういったナーガには『ヒューナーガ』と区別することがあるんです。とはいっても他の種族から見て自分の種族は同じのようなものなのでそこは難しいんですけどね」


だからこそ魔王様は魔族の共存を実現して相互理解を深めていきたいとメディは目を輝かせていた。


勉強の時間が終わり夜ご飯まで自由に過ごしていいとメディに言われたのだが暇さえあれば依頼を受けていた私は特にすることもなく暇を持て余してしまった。


パンドラとお話でもしようかと最初に会った部屋にはおらず、お風呂を覗いたがいなかった。


「あ、そういえば」


庭か森にいれば通信できることを思い出し、頭にパンドラの顔を浮かべながら私は「おーい」と声に出してみる。


「その声はポポアか。どうした」


「あー!繋がったー!」


「大声を出すなやかましい!どうしたと聞いている」


「メディに夜ご飯まで自由に過ごしていいよーって言われたんだけどすることないの」


「なら庭に来い。遊ぶことはできんが話くらいならしてやるぞ」


言われたとおり城を出て庭へと向かうとパンドラはいた。


手招きされてそのままついて行くと一本の大きな大木があり、パンドラはその大木に寄りかかって私も同じように隣に座る。


「町はどうだったんだ?」


「どうって言われても変わらないよ。兵士がちょこちょこいたくらいで」


「やはりもうお前が依頼を受けていたことは伝わっていたか…なら時期を早めなければいけないな」


時期って何の?と聞く前にパンドラは口を開いた。


「この城の場所が把握されているのは非常に痛い。あと数日もすれば他の人間がここに来るのも確実だろう。お前ならどうする?」


「迎え撃って倒せないと諦めさせるかな」


「うむ。それが最もいいだろうな。しかし俺の父親が死んでから俺が戦力外なほど弱いからと魔物たちは出ていき戦えるのは実質メディとお前しかいない。じじいも戦えないことはないが歳が歳だからな」


「それじゃあ…ここを捨てるとか?」


「それはダメだな。親父が建てたものだからそう簡単には捨てられん。だからこうするんだよ!」


パンドラが勢いよく右手を挙げると地面が大きな音を立て、地震が起きたように感じた。


しかし周りの景色は変わらない。


「なにしたの?」


「鳩が豆鉄砲をくらったようだな。今この城と庭、そして森はワープしたんだ。行き場所はランダムだがな」


さすが俺といった顔をするパンドラ。


しかしその表情は一瞬にして苦痛の表情へと変わった。


「す、すまない!ポポアが町に兵士がいると言ったものだから早く転移しないと冒険者が来るだろうと話をしていてな…いや本当にすまない!え?俺が今日の飯を代わりに作れ?私はポポアとバーベキューだと?待ってくれ!…」


「今の連絡相手メディだね」


さっきまでの元気なパンドラはどこへやら、すっかり俯いてしまった。


そして、遅れて私にメディからの連絡が入った。


「ポポアさん、先ほど魔王様が庭ごと城を転移させてしまいその際に作っていた料理が台無しになってしまったので周りの偵察も含めて食料調達に行きましょう」


「うん…けどパンドラは大丈夫なの?」


「城に篭るように言ってあるので大丈夫ですよ。庭へ向かうのでもう少し待っていてくださいね」


俯いたままのパンドラを持ち上げて城の中に放り込み、庭で転がっているとおしゃれをしたメディが城から出てきた。


「お待たせしました。では行きましょうか」


森を抜けた先には自分の知っている景色はない興奮を胸に私はメディと未知の世界へと足を踏み出した。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] お話の内容的に白い恐怖(3部)と部族と種別(4部)は順番が逆ではないでしょうか。 [一言] まだお話の序盤部分ですが、面白くなりそうな感じをひしひしと感じています。 応援してます。
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