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Lv.5 暗黒神ダークディザスターへの誓い

 俺はビレジ村の村民。

 今日も街の名物である大岩を見守っている。

 いや、これもちゃんとした仕事だし、別に働き口が無くて途方に暮れているわけではないぜ?

 ……おっと、何やら棺桶を二つ引きずる怪しい男が近づいてきたぞ。


「やあ。この大岩を動かせる力自慢は居るかい?」


 俺が挑発的に話しかけると、金色のサークレットを着けた男が無言のまま大岩を転がし始めた。


「おお、こんな大岩を動かせるなんて凄~~……ってオイ! どこに持って行くんだっ!? おーーーーい!!」





『平和だな~』


『平和ですね~』


 ここは魔王城の中庭。

 エルフの森を再現した庭園には色とりどりの花が咲き、さしづめ南国の楽園のようだ。

 元々はライラ姫の為に建てた庭園なのだが、何故か職人達が『魔王様の心意気に応えるのだ!』と、むせび泣きながらとてつもなく立派なモノを造り上げてくれたので、今では私も休憩に利用させてもらっている。

 世界征服を完遂したあかつきには、こういった景色を配慮しながら美しい国づくりに勤しみたいものだ。

 だが……!


『魔王様ーーっ!』


 慌てた様子で駆け寄ってくる大臣の姿が、私の休憩時間が終わりである事を物語っていた。


『何事じゃ騒々しい』


『勇者共が迷いの森の最深部に到達した模様です!!』


 大臣の言葉に、私とライラ姫の顔が青ざめる。


『馬鹿な! 迷いの森を抜けるにはエルフの協力が必要であろう!? ライラ姫がここに居るのに、どうして協力を得られたと言うのだ!』


 ――迷いの森はエルフの力を借りぬ限り決して抜ける事は出来ない。


 だからこそ、勇者はライラ姫を救出する為にドラゴン退治を引き受けたはず。

 モンスター達には『ノックバック』とやらを引き起こさぬよう徹底させているから、木々や壁に身体をめり込ませて空間を飛び越える荒技も出来ぬはず。

 なのにどうして……?


『同一イベントフラグを保有する互換オブジェクトによるフラグ置換の可能性が……!』


 大臣がまた何やら意味の分からない言葉を口走っている。

 私の呆れ顔を察してか、こちらが突っ込むより先にいつもの魔法を唱えた。


『こちらをご覧ください魔王様』


 大臣が庭園の池の水面に映像を映すと、そこには勇者が大岩を転がす姿があった。


『何これ』


『迷いの森の南に位置するビレジ村の名物、"力試しの大岩"でございます』


 どうして村の名物の大岩をゴロゴロと森に向かって転がしているのか、相変わらず勇者の奇行は理解不能である。


『勇者が森の中で大岩を転がしている理由は……?』


『大岩を押している時のオブジェクト固有フラグの5ビット目の値が、エルフを仲間に加えた時と同一なのです』


『いや、それじゃ意味分かんないってば』


 私が呆れ顔でぼやくと、大臣はライラ姫から目を逸らして気まずそうに口を開いた。


『勇者があの大岩を押しながら森を歩くだけで……ライラ姫を救出したと見なされます』


『ぐっは』


 あまりに残酷過ぎる現実を突きつけられ、私は思わず踏み潰されたデスドクガエルみたいな声を漏らした。


『そうですか。私の存在価値は、あの岩と同じですか……へぇ、そうですか』


 あまりにも悲しすぎる言葉を呟くライラ姫が居たたまれない。

 私は彼女を慰めようと、恐る恐る目を向けると……笑顔だった。


『魔王様。私、決めました』


『お、おぅ?』


『暗黒神ダークディザスター様の名の下に、この世界中の愚民共を支配してやるのです』


『お、おぉ……?』


『お前ら絶対許さねぇからなあ!?!?!?!? 地獄の果てまで追い詰めて5000兆回後悔させてやるあああああああああああーーーっ!!!』



< 本日の魔王城修繕報告書 >



1.魔王城にトレーニングルームを増築(主にライラ姫用)。


2.魔王城に弓技修練場を増築(主にライラ姫用)。


3.魔王城の寝室に防音設備を敷設(主にライラ姫用)。


(追伸)

 警備兵より、夜な夜な呪詛が聞こえてきて怖いという苦情が寄せられたため、防音設備を強化しました。

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