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緋色の雨パーティーの行方 3

 盗賊や魔物、それに夜這いに来るフィーネを撃退しながら馬車で旅すること二週間。俺達は無事にリズちゃんの管理する田舎町へと到着した。

 馬車を預けて、軽く周囲を見回してみるが……なんと言うか……住民の瞳に生気がない。


「なぁ、リズちゃん」

「はい、なんですか、お兄さん」

「いや、その……なんで、みんなこんなに元気がないんだ?」

「ダンジョンから大氾濫(スタンピード)が発生しないようにするので精一杯だから、です」

「……あぁ、なるほど」


 ダンジョンは町の資金源になるので普通はありえない現象だが、ダンジョンの規模に対して冒険者が不足していると、皆で必死に狩りをする必要がある。

 つまり、町の住人が慣れない魔物狩りで疲れ果て、町の生産力が低下するということ。

 この様子から察するに、かなり切羽詰まっているようだ。出来るだけ早くダンジョンに潜って魔物を間引く必要があるだろう。


「アレンお兄ちゃん、アレンお兄ちゃん。久しぶりに屋根のある寝床だよ! 今日は誰にも邪魔される心配がないし、たくさんご奉仕してあげるからね!」

「……お前は色々自重しろ。あと、さらっと日常的におこなわれているかのような発言で既成事実化させようとするのは止めろ」

 長旅で疲れているので、俺の突っ込みにもキレがない。だが、みんなもいつものことと理解してくれてそうなので気にしない。

 俺はフィーネの頭をグリグリしてから周囲を見回した。


 町を行く人々。見分けがつかないがおそらく魔族も混ざっているだろう。それにエルフやイヌミミ族などなど、実に多岐にわたる種族が目に入る。

 たしかに住民は疲れ切っているようだが、決して死んでいる町ではなさそうだ。


「……アレンお兄さん、こんな町で暮らすのは嫌、ですか?」

 リズちゃんが不安げに俺を見る。

 俺はそんなリズちゃんの頭をポンと叩き、みんなへと向き直った。


「聞いてくれ。みんなが不安だっていうのなら、町に戻るのもありだと思う。だけど、専属に誘われてるのは事実で、この町は冒険者を必要としている」

 冒険者というのは危険と隣り合わせな代わりに、大きく稼ぐ職業である。だが、俺達はお金目当てで冒険者になったわけじゃない。

 誰かが魔物を狩らなくては、大氾濫(スタンピード)が発生して大変なことになる。そんな危険からみんなを守ることに憧れて、俺達は冒険者になった。

 そしていま、この町のみんなは冒険者を求めている。


「俺達が魔物を狩れば、みんなが元気になる。それって、俺達の理想だって思わないか?」

 俺は静かに問いかけ、みんなを見回した。

「フィーネはもちろん、アレンお兄ちゃんと一緒にこの町で頑張るよ!」

「お前はどうでも良い」

「酷い!? でも、イジワルなお兄ちゃんも好きぃ……えへへ」

 ……色々と手遅れっぽい。


「あ、あの、私も、私もアレンくんと一緒に、この町で色々と頑張りたい。……わ、私のことも、どうでも良いかもしれないけど」

「バカだな。俺がフェリスにそんなことを言うはずないだろ?」

「――フィーネと扱いが違いすぎるよ!?」

「お前は、少しで良いから日頃のおこないを振り返ってみろ」

 ていっ! とデコピンを入れる。

 フィーネはちょっぴり涙目になっておでこを押さえた。


「日頃のおこないって言われても……えっとえっと……あっ! もしかして、お兄ちゃんが川で水浴びをしてるときに、乱入したときのことを怒ってる?」

「もちろん怒ってる」

「うぅ、ごめんなさい」

「分かれば良いんだ、分かれば」

「うん、分かった。次は下着姿じゃなくて、ちゃんと素っ裸で乱入するね!」

「誰がそんなことを言った!?」

「そうだよね。お兄ちゃんは自分で脱がしたい派だもんね」

「よし分かった、お前はちょっと黙ってろ」

 まずは口の中に布を詰めます。そうして舌の動きを束縛して、猿ぐつわを噛ませます。最後に後ろ手で縛って、左右の太ももをそれぞれ閉じた状態で縛ったら完成。

 俺はうーうー唸るフィーナを道ばたにポイした。


「フェリス、俺と一緒に頑張ろうな」

「ええっと……フィーネちゃんの扱いが酷い」

「フェリスねぇもっと言ってやって!」

「――って思ったけど、言動を考えたら私はなにも言えないよ」

「フェリスねぇ!?」

 なにやらフィーネがショックを受けているが自業自得である。


「ちなみに、ダンジョンで魔物を倒す以外にもやりたいことがあるのか?」

 さっき色々と言ってたけどと、フェリスに問いかける。

「うん、実は……というか、アレンくん、スルースキル高すぎだよ」

 俺が何年フィーネと一緒にいると思っている――なんて、ことは言わない。フィーネにいちいち付き合っていたら話が進まなくなる。

 だから、フィーネがあっさり猿ぐつわや拘束を解いていることにも突っ込まない。突っ込まないが……数秒で抜け出すとか、一体なにをどうやったのやら。


「で、やりたいことってなんだ?」

「えへへ、お料理を覚えたいの。だから、この町でしばらく暮らすなら、ウェイトレスのバイトを始めようかなぁ……って」

「あざとい、あざといよフェリスねぇ! そうやってお兄ちゃんに、『良かったら試食してみて? え、私も試食したい? し、仕方ないなぁ』とか言うつもりなんでしょう!」

「ふえぇ!? そ、そんなこと考えてないよ!?」

 フェリスが顔を赤く染める。

「遠征パーティーだと町にいないことが多くてバイトなんて出来ないもんなぁ」

「え? あ、うん。そうなんだよね。……というか、やっぱりスルーなんだね」

 感心されているような、呆れられているような、微妙な空気だが、フィーネの件で相手をしているときりがないのでスルーする。


「ラナはどうなんだ? あんまり目的とか聞いたことなかったけど」

「ボクは、故郷のみんなが幸せに暮らせる場所を見つけたくて冒険者になったんだよ」

「故郷って……イヌミミ族の?」

「うん。ボク達の一族は小さい森で細々と暮らしてるの。だから、いつかこの町にみんなを招待できたら嬉しいなぁ」

「そっか……」

 イヌミミ族が移住……モフモフ天国。

「ラナ、俺も君の夢が叶うよう、全力で協力する!」

 俺はラナの手を握ってぶんぶんと振った。


「う、うん。ありがとう」

「気にするな。俺達、仲間だろ」

 だから、いつかモフらせてくれな――とは、心の中でだけ呟く。イヌミミ族は本当に親しい相手にしかイヌミミやシッポを触らせてくれないので、焦りは禁物なのだ。

 ここまで、イヌミミやシッポを意識していることを悟らせないようにしてきたので、これからも慎重に事を運ぼう。


「ジークは……どうだ?」

「魔族の領土だからな。人間達のあいだで有名になるのは難しいだろうな」

「そう、だな。ここで頑張っても、人類の英雄にはなれない」

 ジークの夢には添えないかもしれない。

 そう思ったのだが、ジークは不意にニヤリと笑って見せた。


「だが、英雄を目指す奴が、困ってる町の連中を見過ごすなんて、出来ないよな」

「……なら?」

「ああ。俺はまず、この町の英雄を目指す!」

「決まり、だな」

 俺はニヤリと笑い、リズちゃんへと視線を向ける。


「聞いての通りだ。俺達緋色の雨パーティー、四名はこの町の専属になる」

「フィーネ、フィーネも居るからっ! というか、リズちゃんはフィーネのマナ友、なんだからね? フィーネも混ぜないとダメなんだからね?」

「分かった分かった」

「やったぁ! さり気なくさんぴーの確約を……なんでもないです」

 ひと睨みして黙らせ、もう一度リズちゃんを見る。


「そんなわけで俺以下五名、この町の専属になるつもりだ」

「ありがとうございます、アレンお兄さん。それにジークさん、ラナさん、フェリスさん。それにフィーネちゃん。これからよろしくお願いしますね」

 ふわりと微笑んで、優雅に膝を折る。実に礼儀正しい女の子である。


「それでは、詳しい契約内容や住居について決めようと思うんですけど」

「え、住居?」

「ええ。この町の専属になってもらうんですから、新築の家をご用意する予定です」

 よし、絶対に部屋に厳重な鍵が掛かるようにしてもらおう。


「ただ、その前に冒険者ギルドに行っても良いですか? あたしが町を空けていたこともあって、どうなっているか心配なので」

「あぁ、そうだな。それじゃ、まずは冒険者ギルドに行ってみよう」

 そして華麗に仕事をこなして、夜這いの心配がない安全な寝室をゲットだ!

 

 昨日の夜の更新時だけ、看板に入っていました!

 なお、朝の更新は40PT差で……あと4、5人ぶん評価をもらえるだけの面白さがあればああぁっ! ってなりました。フィーネをもう一回くらいグリグリしたらよかったんですかねぇw

 なにはともあれ、看板に入ることが出来ました。ありがとうございます! もう一回返り咲くのを目指しつつ頑張ります!

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