緋色の雨パーティーの行方 2
本日二度目の投稿です。
最新話から来た方はご注意ください。
ジーク達の悪評をどうするか、俺は色々と考えを巡らした。
フィーネいわく、もともと俺の扱いが不当だという風評だったので、事実を公表してもみんなの名誉は回復しない。むしろ悪化するとのこと。
疑わしくはあるが嘘とも言い切れない。
そんな訳で、宿の一室に集まって緊急会議を開くことにした。
メンバーはジーク、ラナ、フェリス。それに俺とフィーネ。そのほかにリズちゃんがいる。
ダンジョンの一件の後、一緒に町に帰ってきたのだが……魔王の娘がなんで、人間の町についてきてるんだろうか? こんな人里に居て大丈夫なのか、お兄さんはちょっと心配です。
だが、いまはジーク達のことが先だ。
「緋色の雨パーティーを復活させるのは歓迎だけど、普通にダンジョン攻略を再開させたんじゃ、おまえらの噂が悪化する気がするんだよな……」
俺を追放して新メンバーと派手に失敗。そして俺に助けられ、再び俺と組む。そうなったら、ジーク達がなにを言われるかは想像に難くない。
「いっそ、みんなで辺境に行って、おもしろおかしく暮らそうか?」
今回の一件で、ジーク達は装備を失ったりでかなりお金を使ったらしいが、俺はわりと貯めている。みんなの初期費用くらいは捻出できるはずだ。
「フィーネは歓迎だよぅ」
「私も、アレンくんと一緒にいられるなら、他になにもいらないよ」
「ボクは……うん。辺境で身体を動かせるなら、それも良いかな」
フィーネに続き、フェリスとラナが同意。
「うぅん、俺の夢は英雄だからなぁ」
続けてジークがぽつりと呟く。
たしかに、田舎暮らしでは英雄になれないな。
「ジークは戦える方が良いのか」
「そうだな。ただまぁ……一時的に避難するくらいならありだと思う。俺としても、この状況は精神的に良くないって思うし」
田舎でほとぼりを冷ます感じか。たしかにそれも悪くない。少し落ち着けば、色々考えもまとまるかもしれないしな。
「アレンお兄さん、あたしも意見して良いですか?」
リズちゃんがおずおずと手を上げた。
「もちろん良いけど、意見ってどんな?」
「あたしの領地の隅っこに、ダンジョンを擁する田舎町があるんです。でも、冒険者がまったく足りてなくて、良ければ専属になってくれませんか?」
俺は軽く目を見張った。
ダンジョンは冒険者にとっても、冒険者ギルドにとっても収入源となる。
だがそれはあくまで、近くに町がある場合のみ。遠征パーティーが遠征するような遠くにあるダンジョンは、国が近くの町を介して依頼を出している場合が多い。
赤字覚悟で報酬を上乗せして、普通に攻略するよりも旨味を持たせているのだ。
でもって、専属というのはその名の通り、どこかの町の専属になると言うこと。遠征パーティーにとっては名誉なことで、夢の到達点ともいえる。
条件次第ではあるが、決して悪くない申し出だ。
「もしかして、このあいだ言ってた、お願いって言うのは……」
「ええ、このことです」
「なるほど。だから救出を手伝ってくれたんだな」
俺達が分裂したままなら、このお願いは成り立たない。
「えへへ、そんなところです」
そんなところらしい。こういう素直なところはポイント高い。それに比べてフィーネは、なんと言うか……策を弄しすぎ、なんだよな。
「リズちゃん、一応聞いておきたいんだが、その田舎町ってどんなところなんだ?」
「多種族が暮らしている町です。人間も暮らしていますよ」
「おぉ、そうなのか」
魔族だけの町かと思ったがどうやら違うらしい。
「彼女は領主の娘かなにかなのか?」
「彼女は魔王の娘らしい」
「へぇ、魔王の娘。……魔王の娘? 魔王の……娘?」
ジークがリズちゃんを見て、ワンテンポ遅れて飛び下がった。
「おいおいおい、魔王って、魔物の王ってことだよな!?」
「それ、勘違いだから落ち着け」
臨戦態勢に入るジークを宥め、リズちゃんとのあいだに入る。
「……勘違い、だと?」
「俺も同じ誤解をしてたんだが、魔王って言うのは魔族の王で、ダンジョンに出現する魔物とは似て非なる存在らしい」
「いえ、そもそも似てませんよ」
「……らしい」
リズちゃん的こだわりポイントだったようなので訂正しておく。
「ねぇ、アレンくん。魔物と違うって言うのは?」
「リズちゃんいわく、ダンジョンに出現する魔物は魔力素子が飽和して産まれる存在で、魔族にとっても敵なんだってさ」
「じゃあ、魔族は?」
「魔族領で暮らしている種族。人間とはほとんど交流はないけど、基本的には種族が違うだけなんだって。人間にとってはエルフやイヌミミ族と同じような立ち位置みたいだ」
フェリスが「へぇそうなんだね~」と感心している。
事実ではあるが、この子はもう少し人を疑うことを覚えた方が良い気がする。
「話を戻すが、リズちゃんは魔族領にある町に俺達を招きたい、ってことなんだよな?」
「ですです。皆さんに、あたしの管理する田舎町の専属になって欲しいんです」
「ってことらしいけど……どうする?」
俺はジーク達に視線を向けた。
「そりゃ、専属っていえば憧れだけど……俺達で良いのか?」
ジークは少し不安げな面持ちで、リズちゃんに尋ねる。
「もちろん事情は理解したうえで皆を誘っています。魔族領の片隅ですので、ここから馬車で二週間くらい。三重の意味で、皆さんにとっても暮らし辛い土地ではないと思います」
「三重の意味?」
「噂は届きませんし、気候も穏やかです。なにより、町の者は冒険者を必要としています」
ジークはなるほどと納得する素振りを見せた。それから、ラナやフェリスに、意見を求めるように視線を向ける。
「ボクは、賛成だよ」
「私は、アレンくんが一緒なら、どこだってかまわないよ」
フェリスのセリフを切っ掛けに、みんなの視線が俺に集まる。
「アレンお兄さんはどうですか?」
「……誘っているのは四人か? それとも五人か?」
ダンジョンの入り口にある祭壇で一度に転移できるのは四人まで。五人だと中ではぐれてしまうため、一パーティーは四人が一般的となっている。
つまり、緋色の雨パーティーにフィーネは含まれていない。
「もちろん、フィーネちゃんを含めた五人です」
「そっかぁ……」
「――いまがっかりしたっ! お兄ちゃんがっかりしたよ!?」
「気のせいだ」
フィーネが同行するより、放置する方が不安なのでがっかりはしてない。フィーネが居ても居なくても面倒だなぁとがっかりしただけである。
「……あ、やっぱりがっかりしてるわ」
「お兄ちゃんがいじめるうううううっ」
悪いのは俺じゃなくて、がっかりな妹だと思う。
「取り敢えず、俺に異論はないよ」
というか、いまの俺にみんなの意志を曲げるなんて出来ない。もし曲げたら……俺が罪悪感で死んでしまうという意味で。
「せっかくだ。リズちゃんの招待に応じて、その魔族領に行ってみよう」
夜のランキング集計中なのでジャンル別日刊の看板に入っているかはまだ不明ですが、おかげさまで他の作品が急に伸びていなければ看板に入っているところまでポイントが伸びました。
ブックマーク、評価をしてくださった方ありがとうございました!
感謝の気持ちを込めて、本日二度目の投稿です。
まだまだ頑張りますので、面白い、続きが読みたいと思ってくださいましたら、ブックマークや評価をポチッとよろしくお願いします!