7月20日 ~市営プール~
今日から夏休みだ。小学校生活、最後の夏休み。南小学校6年1組の北見新次は、友達の三沢貴史、能代一郎、村山健、浪江陽太、長岡浩と共に、市営プールへ来ていた。まだ近隣の幼稚園や中学校は夏休み入りしておらず、プールは貸しきりそのものだった。25メートルの大きなプールに6人だけ…
みんな、それぞれ泳いだり、浮いたり、水をかけあったりしていた。そんな中だった。小学生っぽい人たちがプールに入ってきた。
「あいつらも、友達と来たのかな?
せっかく貸しきりで楽しんでいたのに…」
新次が呟いた。
「そんなこと言うなよ」
陽太が釘を刺す。
「学校ではみたことない。南小のやつじゃないみたいだぞ?」
一郎が言った。
新次もよく見てみると、確かにみたことのない人たちだった。
「あいつら、北小のやつらだ。前、陸上の大会で見たんだ。」
陽太が言う。
「まあ、関わるな。後がめんどくさい。」
新次が言った。
この2組はお互いを気にせず、ワイワイ遊んでいた。しかし、昼を少し過ぎたたころだった。
「もういいだろう?早く来て、めいっぱい遊んだやろ?帰れよ。」
声をかけられた。知らない人だ。きっと、北小の奴らだ。新次は思った。
「文句があるならおめぇらが帰れよ。先来たのは俺たちだろぉ?」
健が怒鳴りつけた。
「なんだとぉぉお?」
むこうも応戦してくる。
「まあまあ、やめろよ健君」
陽太が止める。
「じゃあ出てけ」
向こうはいっこうにやめる気はないようだ。
数分言い合っていると、更衣室の方が騒がしくなった。新次たちが見ると、誰かがプールサイドで服の入ったプールバックを持って今にも水中に服を落とそうとしていた。
言い合っていた北小のひとが笑う。
「ガハハハハハ。お前らの着てきた服が水浸しになってもいいならここにいな。お前らは充分独占し続けたんだから俺たちに譲りな。服を濡らしたくなければな。ガハハハハハ。」
「くそぉぉぉお。」
健が頑張って感情を押さえ込んでいるのが分かる。
「仕方ない、今日は帰ろう。」
新次が言った。新次たちは、北小の人たちの笑い声を背に、帰っていった。いや、帰らざるをえなくなってしまったのだった。