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イシュト大陸物語  作者: 明星
力の証明
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第54話

「あ、おかえりなさい。首尾はどうですか?」

物資輸送の報告を行う為、第二中継基地の冒険者組合を訪れる。

積み荷一覧の台帳を渡すと組合員の青年は好奇心を押さえられない様子で聞いてきた。

「皆さんが出発した後に第三中継基地から戻った冒険者の方に聞きました。リザードマンの話」

比較的治安の安定しているこの辺りでの仕事に退屈している青年は刺激的な話に飢えていた。しかし今の三人はそれに付き合ってやれる気分でもなく、一通りの説明をするに止めた。


「そうですか、また新しいオーガが」

物足りなさそうにしていた青年も新しい驚異の話になると真剣そのものだった。

「わかりました、この周辺も念の為警戒するように見張りの方達に伝えます。あ、それと、以前討伐された巨大な猪の件ですが」

そう言って青年は猪のいた場所を調査した結果を話し出した。

「黒い液体を流す猪、少し気になったので手の空いている冒険者の方に調べてきてもらいました」

その結果、猪の寝床になっていた草の山の下からは数匹分の猪の骨と錆びた短剣、黒い染みがいくつか見つかった。

「ここから推測するに、おそらく住みかを魔物に襲われ仲間を守るために戦った猪が、結果としてその魔物の血に影響され、あのような姿になったものと思われます」


三人は冒険者組合を出て酒場へと向かう。

酒場につくと早々にヴェラが食事と酒を頼んだ。

久しぶりのまともな食事と酒に、本来喜ぶべきはずだが、アッシュとディーンはそうすることができなかった。


「なんだい?さっきの話が気になってるのかい?」

「ああ、旅に出てからファングにはだいぶ助けてもらっている。魔物を噛み殺したのも一度や二度じゃないはずだ」

二人が気にしているのはそのことだった。

魔物の血が生き物に影響を与えるのであればファングも例外ではない。

ファングにはこれまでに何度も魔物との戦いに参加してもらっている。

「でも一緒にいておかしなところはないんだろ?心配なら明日基地の外に出て確かめてみりゃいいさ。とりあえず今日は無事ここまで帰ってこれたお祝いだ」

二人ともあたしに付き合っておくれよ、そう言ってヴェラは杯を差し出す。

二人もそれにならい杯を差し出し、ぶつけた。


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