第53話
第三中継基地から第二中継基地へと続く道をディーンの操縦する荷馬車がゆっくりと進んでいる。
第三中継基地へと戻ったアッシュ達は今回の経緯をバルドへ伝えた。
沼地のオーガの討伐、しかしその直後灰色のオーガの不意打ちに合い退却を余儀なくされたことを。
灰色のオーガの行方は不明だが、捜索して討伐するには人手が足りない。
この件に関しては改めて冒険者組合へ依頼を出すとバルドは言った。
その後、第三中継基地の設備では満足に治療を受けられないことから、アッシュ達三人は輸送する物資の積込みが終わり次第、基地を出発したのだった。
比較的傷の浅いディーンに馬を任せ、アッシュとヴェラは荷台で物資に寄りかかって休んでいる。
「ねぇ、アッシュ?」
ディーンが言いにくそうに口を開く。
「アッシュが森で目を覚ましたとき、どうしてカティナの名前を呼んだの?」
「ああ、その事か」
声を出すのが辛いのか、アッシュは荷台を移動しディーンの傍へ寄った。
「オーガに殴られて気を失っていた時、あいつに名前を呼ばれた気がしたんだ」
ただの夢だ、とアッシュは呟いた。
「カティナってのは誰なんだい?」
眠っていると思われたヴェラが不意に口を開いた。
「なんだ、起きてたのか」
「たまたま聞こえてきたのさ」
舌を出しておどけて見せる。
「カティナは、俺達と同じ村に住んでいた女の子だよ」
「ってことは?」
「ああ、竜の襲撃の時に殺された」
「すまない、やぶ蛇だったね」
「いや、かまわない。もう昔のことだ」
アッシュが元の位置に戻り、荷物に深く体を沈める。
「結局、あの灰色のオーガには歯が立たず、満足な結果を残せなかったな」
「まぁね、冒険者やってりゃそういう予定外のことも起こるさ。いいじゃないか、とりあえずオーガ討伐は達成できたんだ。今はそれで良しとしようよ」
バルドの厚意から灰色のオーガの件は今回のオーガ討伐から除外され、依頼の達成証明書を出してくれた。
とはいえ、アッシュ達三人は晴れぬ気持ちのまま帰路に着くこととなってしまったのだった。




