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イシュト大陸物語  作者: 明星
力の証明
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第49話

ディーンは洞窟でオークと出合ったときの事を思い出した。

「君はまた、そうやって僕を先に逃がすのかい?」

あの時もアッシュはディーンを先に逃がして時間を稼いだ。

「ああ、そうだ。それが俺の役目だからな」

そして今回も、アッシュは一人でオーガの相手をしようとしている。しかし。

「でもあんた、そんな体で何ができるって言うのさ」

折れた右腕では剣を握ることができない。今のアッシュではオーガと対峙しても戦う手段をもたないのだ。

「助けが来るまでなんとか持ちこたえる」

余っていた縄を使い、盾と左手を固定しながら続ける。

「頼む、俺達だけで倒せない以上他に方法がないんだ。今も必死でファングが引き付けてくれてる。俺、戻ってやらないと」

言い終わるとアッシュは踵を返し歩き出した。

その姿に掛ける言葉が見つからず、ディーンとヴェラの二人は基地へ出来る限りの速さで戻っていった。


「ファング!」

森へと戻ったアッシュはファングを探して何度も名前を呼ぶ。

遠くから微かにファングの遠吠えが聞こえ、アッシュは声のする方向へと急いだ。


藪からこちらに近づく音が聞こえらアッシュは盾を構え音の正体を待つ。

少しして、藪から歩み出てきたのはファングだった。

「無事でよかった」

ファングの体は泥で汚れているものの怪我はしていない。

「時間を稼がないといけない。すまないが協力してくれ」

アッシュの言葉を聞き、ファングはどこかに向かって歩き出した。

ファングの目指した場所は最初にオーガと戦った広場だった。

「ここなら奇襲を防げる、か」

アッシュは広場の中心に座り体を休めた。

ファングは立ったまま、周辺を警戒している。

ふとファングは耳を動かし、森の一角を睨みながら牙を剥いて唸る。

ガサガサと音をたて、森から灰色のオーガが出てきた。

「ファング、隙をみてあいつに」

攻撃を仕掛ける、そんなアッシュの言葉を遮るようにオーガが飛び出してくる。

わずか三歩で広場の中央まで出てきたオーガはアッシュに向かって腕を振り上げた。

不意をつかれはしたものの、その動きに反応できたアッシュは盾でその攻撃を防ぐ。

しかし、オーガの一撃はアッシュの防御を崩し盾を跳ね上げた。

直後、オーガが腕を薙ぎ払う。

慌てて体の向きを変え盾を構え直すが、アッシュの体は簡単に吹き飛ばされてしまった。

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