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イシュト大陸物語  作者: 明星
力の証明
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第48話

ディーンとヴェラ、倒れている二人へとオーガが近づく。

オーガはディーンの頭を掴み、無造作に持ち上げその手に力を込めた。

あまりの痛さに目を覚ましたディーンが叫び声を上げる。

もがき、あがくがオーガの手から逃れることができない。

その時、藪から飛び出たファングがオーガの足へと噛みついた。

噛みつき、すぐにまた藪の中へと消える。

ディーンを離したオーガは辺りを見渡している。

再度別の藪からファングが飛び出すと、先程と同じように一撃をくれ、森の奥へと駆けていった。

オーガはファングを追い、森の中へと消えた。


残された三人、それぞれが何かしらの負傷を抱える中で一番最初に動けたのはディーンだった。

「ヴェラ、歩けるかい?」

「ああ、ゆっくりならなんとかね」

起き上がろうとして顔を歪める。

服の下に着ていた鱗状の帷子のお陰で、牙に体を貫かれることは避けられたが、それでもオーガの顎の力はヴェラの肉体を傷付けていた。

ヴェラの安否を確認したディーンは次にアッシュのもとへと向かう。

吹き飛ばされ、どこかにぶつけたのかアッシュの頭からは血が出ている。

オーガの一撃は幸いにもアッシュの右腕へ当たり、致命傷は免れたがその腕は折れていた。

何度も自分を呼ぶディーンの声で、ようやくアッシュは目を覚ます。

「何が、あった?」

何が起きたのか、アッシュは全く理解できていない。

「オーガだよ。最初の奴よりずっと大きくて狂暴な。今はファングが引き付けてくれてる」

アッシュのヴェラを心配する言葉にも、ディーンは心配ないよと返し、何とかアッシュを立たせた。

「お前も、怪我をしてるじゃないか」

アッシュに言われてディーンは初めて気付いた。

掴まれていた頭からは血が流れ、二度も殴り飛ばされたことで全身がボロボロだった。

「逃げよう」

ディーンの提案にアッシュは頷く。

「ああ、一刻も早くここを離れよう」

ディーンの手を借りて立ち上がったヴェラに肩を貸し、森の外へと歩き出した。


森を出て沼地を進む。

沼地の地面は柔らかく、足場の悪さからなかなか進めない。

来た道を半分ほど戻った頃、ディーンは思い出した。

「このまま基地へ戻ることはできないけど、どうするの?」

依頼書にあった一文だ。

追跡され基地に被害が出るのを防ぐために直接基地へ戻ることは禁止されている。

これを破り、基地に危険を呼び込んでは今後の冒険者としての活動に支障がでるだろう。

「俺はここから引き返す。お前達二人は基地に戻ってバルドさんに助けを求めてくれないか?」

アッシュはそう言うとヴェラから離れ立ち止まった。

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