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イシュト大陸物語  作者: 明星
力の証明
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第45話

広場の真ん中まで走り振り返ると、ちょうど森の中からオーガが出てくるところだった。

アッシュが周囲を見渡す。

ヴェラとディーンの姿は確認できないが、気配を殺し木々の間に身を潜めているはずだ。


オーガは特に急ぐでもなく歩いてくる。

アッシュと対峙し、興味深そうに見つめてきている。

その時、オーガの後ろの森の中から一本の槍が飛び、オーガの背中に刺さった。

オーガが反射的に振り向くが、そこには誰もいない。

後ろを向いたオーガへアッシュが剣を振り下ろし、腕へと叩きつける。

その痛みにオーガは怒声をあげ距離をとった。


ここに来て初めてオーガは理解した。目の前の生き物がただの獲物ではなく、敵であるということを。

怒り狂ったオーガは猛然と襲いかかってきた。

今までの動きとは比べ物にならない早さで、力強さで。

先ほど森の中で兜を外した為頭部を守るものは何もない。失敗はそのまま死に繋がる。

殴り付け、振り上げ、叩き付けるその攻撃をアッシュは必死に防いだ。


不意にどこからか木が叩かれる音。

アッシュは攻撃を防ぎながら徐々に体の位置を変えていく。

音が聞こえた方向に向かい合うように、オーガが背を向けるように動いた。

体の位置を入れ換えた直後、また木々の間から槍が飛びオーガの背中へ刺さる。振り向くオーガの目には誰も写らない。

再度アッシュがオーガの腕に剣を叩き付けた。


また、木の叩かれる音。

今度はその音に対して体の側面を向けるように場所を変える。

槍が飛び、オーガの肩へと突き刺さる。

肩から槍を引き抜き、オーガは槍が飛んできた方向を睨み付ける。

その時、反対側の木々から飛び出す影が1つ。

ディーンが動物の牙を嵌め込んだ棍棒を振り上げオーガに近寄ると、向こうを見ているオーガの足へ思い切り叩きつけた。

突き刺さる牙を残して棍棒は砕けちり、ディーンは腰から細剣と短剣を抜き放つ。

見えないところからの攻撃、増える敵。オーガは初めて経験するこれらに混乱し、興奮している。

食欲など今はどうでもいい。ただ怒りだけがその頭を支配していた。

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