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イシュト大陸物語  作者: 明星
力の証明
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第39話

次の日も、その次の日もバルドの特訓は続いた。

日を追うごとにバルドの攻撃は重く、鋭くなっていく。

アッシュはそれを必死に防いだ。攻撃を上手く捌けるようになるまで何度も殴られ、何度蹴り飛ばされても立ち上がり、必死に防いだ。

それはディーンも同じだった。まだ体に馴染まない連撃は一撃一撃に上手く力が乗らない。ここだと思った蹴りは容易く防がれ、掴まれ、投げ飛ばされる。それでも立ち上がり攻め続けた。


それを少し遠くから見守るヴェラとファング。

筋力はすぐにどうこうできるものではないとバルドは言った。そうなると今のヴェラに出来ることはなかった。

「なんだかんだで楽しそうだね、あの男達は」

アッシュとディーンが特訓に掛かりっきりで相手をしてくれないからか、珍しくファングはヴェラの膝に顎を乗せて眠っている。

日が暮れ、辺りが薄暗くなる頃本日の特訓は終わった。

疲労困憊で横たわる二人を見下ろしながらバルドは言う。

「だいぶ様になってきたじゃねぇか。ところで、ガレアの野郎は元気か?」と。


「お前達の名前を聞いた時にもしかしたらとは思ったんだがな、組み合ってみて間違いないと思ったよ。戦い方がガレアの野郎にそっくりだ」

四人は焚き火を囲み夕食をとっている。

「何年か前に王都で久しぶりに会ってな、その時にお前達の名前を聞いた。どうやって知り合ったのかもな」

「先生と親しかったんですね」

「そうだな、好敵手ってやつだな。あんな事件がなけりゃ今も一緒に大陸中を走り回ってたかもしれねぇな」

「事件?」

「なんだ、聞いてねぇのか?」

バルドはしまった、という顔をした。

「それは、教えてもらうわけにはいきませんか?」

バレたら怒られるだろうなぁ、とバルドは一人ぶつぶつと後悔を口にしている。

「あいつが言ってねぇなら俺の口から言う話でもねぇんだが。とはいえ雑念があって特訓に集中出来ませんてのも困るしな。俺から聞いたってのは絶対にガレアに言うんじゃねぇぞ」

そう言ってバルドはガレアが冒険者を退くきっかけとなった話を、アッシュとディーンを鍛えるきっかけとなった話を始めた。

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