第28話
「じゃあ、行ってくる」
装備を点検しながらアッシュとヴェラがディーンに手を振る。
「いってらっしゃい。馬車の護衛は任せてよ」
猪との戦いで負傷した足がまだ完治していないディーンは今日のところは馬車へ残ることになり、アッシュとヴェラが連れ立って沼地へ入っていくのを見送った。
「君は行かなくていいのかい?ファング」
そのディーンの足元にファングが体を丸め座っている。尻尾を振ることで返事としたのかそれ以上の反応はなかった。
「わかったよ、じゃあ二人で一緒にお留守番だね」
そう言うとディーンはここのところ少しおざなりになっていた武器の手入れを始めたのだった。
「肩は、もういいのか」
先行するアッシュが後ろのヴェラへ声を投げ掛ける。
「ああ、リザードマン相手なら支障はないよ」
ここに来るまでにリザードマンの説明はヴェラがしていた。
二足歩行するトカゲ、魔物に分類されるその生き物は手に各々武器を持ち、共同体を作り生活する。
多少の知能もあり、今までの相手にはなかった戦いに関する技術を持つ。
リザードマン達の使う武器は主に動物の部位を使った原始的なものだったが、人間の侵攻に伴い質の良い物へ変わってきているという。侵攻してきた人間から武器を奪うからだ。
「だからまぁ、今回は人間がその武器を奪い返す番ってことだね」
そう言ってヴェラはカラカラと笑っていた。
しばらく沼地を進むと、それは見えてきた。
雑ではあるが木を組んだ家のようなもの。そしてその周りで思い思い過ごしているリザードマン達。
家の数が四つ、リザードマンの数も四匹。この共同体にいるリザードマンは今見える分で全部のようだ。
「奇襲をかけるよ」
二人は低い姿勢のままリザードマン達の裏に回る。
「あたしは奥の一匹を狙う。あんたは手前のを頼むよ」
その指示に頷きアッシュが剣を手にとり、ヴェラは短剣を逆手に持ち、一気に走り出した。




