第7話
その声で一番最初に動いたのはファングだった。
叫び声を上げたゴブリンに躍り掛かり喉を噛み千切る。
眠っていたゴブリン達が次々と起き上がり、各々武器を手に持ちギャッギャと喚いている。
数は六匹。半数以上を殺したが、それでもまだ六匹も残っていた。
そのゴブリン達を中心に、アッシュ、ディーン、ファングがそれを囲む形に陣取る。
「下がれ!ファング!」
刃物を持った相手では万が一ということがある。アッシュは念のためファングを下がらせた。
その声に反応して一匹のゴブリンがアッシュに飛び掛かってきた。
アッシュは腰を落とし盾を構える。
それに向けて低い位置から歪な形をした短刀が突き出され、アッシュはその突きを体を捻ってかわすが完全にかわすことができず、金属と金属の擦れる嫌な音が響いた。
充分に引き付けたところで円盾で殴り付け、よろけるゴブリンの頭に手斧を振り下ろす。
前を向くと、続けてもう1匹が走ってきていた。頭に深く刺さった手斧を抜く暇がなく、アッシュはそのまま死体を持ち上げ、近寄るゴブリンへと投げつけた。
直後、駆け出すと同時に片手剣を抜き放ち、バランスを崩しているゴブリンへと斜めに振り下ろした。
残ったゴブリン達はアッシュを警戒し、遠くから落ち着きなく威嚇している。
不意に、そのゴブリンが一匹、また一匹と倒れた。
地面に横たわるゴブリンの頭部には貫通した穴が開いている。
「なんとかなりそうだね」
細剣を振り、血を払いながらディーンが言う。
残りの二匹は戦意を喪失したのかジリジリと後退りを始め、突然奥の通路へと走り出した。
アッシュが死体から手斧を引き抜き、思い切り投げつける。背中に手斧を受けたゴブリンは醜い声をあげ、二歩三歩とよろけるように歩くとその場に倒れた。
なんとか逃げようとしていた最後の一匹はファングに後ろから追いつかれ、その首筋を食い千切られている。
広場に一時の静けさが訪れる。
見回しても動くゴブリンの姿はない。
寝込みを襲ったとはいえ完勝だった。初めて対峙した敵の前で訓練通りの動きができた。
勝利の実感がじわじわと湧いてくる。
二人はここで、漸く緊張から解放されたのだった。




