第21話
討伐依頼書
依頼者 第二中継基地
場所 詳細不明 主な襲撃場所は第二中継基地と第三中継基地間の街道
討伐対象 ジャイアントボア
補足1 その体は荷車よりも大きく、巨大な牙を持っている事が判明している
補足2 襲撃後即いなくなる為生息場所、生息数共に不明
翌朝、基地の外れでファングと合流する。
討伐対象となるのは巨大な猪。今回もファングはその棲みかを無事に発見したらしく、合流するなりさっさと歩き始めた。
「大きな猪なら何度か見たことがあるけど、荷台よりも大きいっていうのは初めてだね」
商隊で暮らしている間、その日の夕食にと傭兵達が連れ立って狩りに出掛けることがあった。
その中で大人と同じくらいの大きさの猪は何度か見たが、今回の相手は規格外だ。
「気を付けることを教えてほしい」
「そうだね、恐らく討伐対象は一頭だけだ。まだこの辺りが未開拓とはいえ、そんな大きな生き物がたくさんいるとは思えないからね。だから目の前の猪だけに集中しておくれ。周辺の警戒はあたしがきっちりこなすからね」
ああ、それから、とヴェラは続ける。
「絶対に突進を受けようなんて思うんじゃないよ?回避して、すれ違い様に攻撃することを心掛けな」
「僕の武器で役に立つかな」
腰に差した細剣を見ながらディーンが困ったように笑う。
「でかいったって生き物だ。横っ腹に突き刺してやれば効かないことはないだろうさ」
襲撃場所から沼地へと入っていく。沼地を進むにつれ、初めはぬかるんだ程度だった地面は更に柔らかくなっていった。
「いいかい、足元に細心の注意を払うんだよ?ひどいぬかるみに足を取られたら避ける間もなく突き上げられちまうからね」
ファングの案内で、予想よりも早くその猪の棲みかへと辿り着いた。
三人はその手前の岩陰に隠れて様子を見ている。
「実際に見るとちょっとした山みたいだ」
今、猪は眠っている。草や小枝を集め布団のようになっているその上で、巨大な体を横たえて眠っている。
丸々とした全身は、話に聞いていたよりもずっと大きく見えた。
「さて、どうしたものかね」
正直なところ三人は、この巨大な体を前に攻めあぐねていた。




