第20話
「やっぱり今回も?」
建物から出て、ディーンはアッシュの考えが自分と同じだろうと確認する。
「ああ、待っていてはいつになるか分からないからな。幸い昨日も襲撃があったって話だ、ファングに追跡してもらう」
第二中継基地を出て、沼地の奥へと街道を進む。
新しく整備された街道をしばらく歩くと襲撃された場所はすぐに分かった。
荷車がひっくり返され、その周辺にはまだ回収しきれていない荷物が散乱していたのだ。
荷車には横から抉られたような傷があり車輪が片方外れている。
「こんなやつ、三人でどうにかできるのか?」
荷物を積んだ荷車を薙ぎ倒すような相手だ、とアッシュは少し心配になる。
「気を付けるのは大きさと力だけだよ。オーガと対峙した時の為の、心の準備みたいなものさ」
アッシュの心配とは裏腹に、ヴェラには少しの心配もないようだ。
「それよりも、これは使えそうだね」
倒された荷車を見てヴェラは何かを思い付いたようで、腰に手を当てそのまま考え込んでいる。
「いつもすまないな」
頼む、というアッシュの言葉を受けてファングは街道から沼地へと入っていった。
「じゃあ僕たちは一度基地へ戻ろうか」
「そうだな、歩きづめだったし、戦いに備えて少し休んでおきたい」
とヴェラを見ると、彼女はまだ荷車を見て考え込んでいた。
自分を見る視線に気が付くとヴェラは笑顔を浮かべた。
「じゃあ二人は先に宿へ戻っておいておくれ。あたしは冒険者組合へ行ってくるよ。頼みたいことができたんでね」
それは何かと聞く二人に、ヴェラは楽しみにしてなと上機嫌で答え、今まで見たことのない軽やかな足取りで基地へと戻っていったのだった。




