第19話
街道は少しずつ南に曲がり、沼地へと入っていく。
途中雨の降る日はあったが、それ以外に何の障害もなく無事に第二中継基地へと辿り着いた。
第一中継基地は村を拠点としていたが、この第二中継基地はひらけた土地に新しく建設された砦のような場所だった。
この辺りの環境に合わせて基地の周囲を塀で囲み、櫓が設置され見張りが立っている。
「冒険者かい?」
近づくアッシュ達に、見張りの一人が気さくに声をかけてきた。
「はい、アーマードの町から来ました」
ディーンがそれに答える。
「そうか、それは助かる」
「何かあったんですか?」
「いや、何ということはないよ。この中継基地はまだ発展途中でね。いろいろと人手が必要なのさ」
基地に入ると、確かに見張りの言うようにこの中継基地は今まさに建設されている最中だった。
あちこちで建物が作られており、威勢のいい声が飛び交っている。
既に完成しているのは宿屋や詰所、事務処理などを行う建物、あとはいくつかの民家だけだった。
三人は一先ず冒険者組合から派遣されている組合員の元へ向かう。
「この依頼について情報を頂きたいのですが」
ディーンが依頼書を差し出し、それを受け取った組合員の青年は目を輝かせた。
「ああ、よかった、お待ちしてました。こいつには昨日もまたやられましてね」
そう言いながら手元の紙の束を捲る。
「では説明しますね。この第二中継基地もある程度の目処がたちましたので、今は更に奥の第三中継基地へ着手しています。まずは土地を確保し、塀や櫓などを建てたいところなのですが、その為の木材や食糧品の輸送が何度も襲われているんです」
青年はよほど頭に来ているのか、初めての襲撃の際の騒動の話や襲われた物資のリストを読み上げたりと大忙しだった。
「ちょ、ちょっと待っておくれ」
ヴェラが慌ててそれを止める。
「あんたの気持ちは分かったよ。早速討伐に向かいたいんだけどね、何かその辺の情報はないのかい?」
ヴェラの言葉にさっきまでの勢いをなくして青年が答える。
「棲みかはまだ分かっていません。何せ突然現れて荷馬車を破壊して去っていきますので」
「ということは探しに行くか、襲われるのを待つしかないというわけか」
そう言いいながらもアッシュは既に何をするのかを決めている顔だった。




