第18話
「ちょっと、歩くの早いよ」
アッシュとディーンの遥か後ろを、頭を抑えながらヨタヨタとヴェラが歩いている。
昨夜調子にのって飲みすぎたのだ。
アッシュが立ち止まり振り返る。
「次の中継基地まではまだしばらく掛かるんだ。のんびりしてはいられない」
行き交う荷馬車の音に掻き消されないように声を張った。
ヴェラの到着を待ち、また歩き出す。
「どこかで休まないかい?あたしはもう頭が痛くて敵わないよ」
いつもなら有難い太陽の日差しが、今日に限っては邪魔でしかなかった。
アッシュとディーンは顔を見合わせ肩をすくめると周りを見渡した。
しかし、この辺りに休めるような場所などなさそうだ。
「すまないがもう少し歩いてくれ。村が見えたらそこで休もう」
そう言って歩き出す二人に、ヴェラは渋々ついていくのだった。
ようやく辿り着いた村で昼食を取る。
第一中継基地で食糧品は買いためてきた。
途中途中の村で足りない分を補充すれば、問題なく次の中継基地まで辿り着けるはずだ。
「やっぱり馬が必要だね」
少し元気の出てきたヴェラが呟く。
「でも三頭用意するお金はないよ?維持費だって馬鹿にならないんだから」
移動手段に関しては誰もが何かしら考えていたが、それを実行できるだけの金がない。
「んーそれはわかってるんだけどね。まぁ道々考えるさ」
それでもどうしても馬は欲しいようで、ヴェラはその後も何かを考えていた。
「よし、行こう」
早々に食べ終わったアッシュが荷物をまとめて立ち上がる。
まだ休み足りないヴェラは少しだけ表情に出して訴えるが、残念ながらそれがアッシュに伝わることはなかった。




