第6話
分かれ道まで戻り、まだ行っていない通路へと進む。
先行するファングはパタパタと尻尾を振っており、近くに危険がないことを示していた。
通路は緩やかに右に曲がっており、しばらく進むと不意に開けた場所に出た。
半球状の空間が広がり、天井の中央は端から端まで裂け、そこから空が見える。その裂け目の下には水が流れており小川を作っている。
「ここがゴブリンの巣というわけか」
岩影に身を隠し広場を見ながらアッシュが呟く。
その視線の先では十匹以上のゴブリンが無造作に寝ていた。
「さっきの二匹は本来見張りだったんだろうね」
声を殺してディーンが言う。
「ああ、先に殺しておいてよかった」
「それで、どうしようか」
2人は少し下がり通路に戻ると声を潜めて話し合った。
「正面から相手をする必要はないんだ、このまま寝込みを襲う」
「できるかい?」
先程の感触を思い出しながら、半ば自分に問うようにディーンが言う。
「ああ、覚悟は決めた。ここで迷ってはいられない、やるよ」
アッシュ達の本来の旅の目的はゴブリンではない。その目的を果たす為、こんなところで立ち止まってはいられなかった。
アッシュは防具が音をたてる為あまり動けない。その為広場の手前に待機し、軽装のディーンが広場の奥まで入る。
そうして手前と奥の両方から、ゴブリンを始末していくことに決めた。
眠っているゴブリンに近づき、極力音をたてないように手斧を首筋に当て、押し込む。
ディーンも同じように静かにゴブリンに近づくと、細剣を頭部へ突き刺した。
肉の嫌な音と金属の擦れる音だけが、交互に広場に響いている。
何匹かを始末し、気持ちの悪さから空を仰ぎ見て深呼吸をしたその時、アッシュの後ろで物音がした。
慌てて振り返ると目を覚ましたゴブリンがジッとこちらを見ていた。
そして次の瞬間、広場に甲高い叫び声が響き渡った。




