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イシュト大陸物語  作者: 明星
力の証明
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第15話

「そうは言ってもね」

ヴェラは頭を掻きながら困ったような顔をしている。

髪と服をきれいに洗って戻ってきたヴェラへ、二人は思ったことを伝えた。

「あいつらはそういった生き方しかできないし、かといってあたし達があいつらの為にできることなんてない。邪魔だと思う者がいれば、どちらかがいなくならない限り解決しないのさ」

昔はあたしも随分と思い悩んだものだよ、とヴェラはカラカラと笑い、そして続ける。

「依頼だから自分達は間違ってないんだ、仕方がないんだって、そう割りきって生きていくことは簡単なことだよ。でもね、まだ慣れていない今だからこそ沸き上がるその疑問は、いつまでも大切に持っておいておくれよ」

そうすればきっと自分なりの答えってやつが見えてくるはずだよ、とヴェラは言った。


ヴェラの髪が乾く頃、ようやくファングが戻ってきた。どうやら無事にエイプの棲みかを見つけたようだ。

湿地帯から更に進むと林があり、その先に洞窟があった。その入口はゴブリン達がいた洞窟よりもずっと狭く、人が一人通れるほどの幅しかない。

「やっかいだな」

中にまだ敵がいた場合、あの狭さでは武器を振り回すことができそうにない。

「あたし一人でいくよ」

「でもまだ中にエイプがいるかもしれないよ」

前に出るヴェラに向かってディーンが問いかける。

「組合の情報が確かなら成体のエイプはさっきので全部だよ。それにアッシュ、ファングの様子はどうなんだい?」

ヴェラの言葉でアッシュはファングを見る。

「今は特に警戒していない」

ファングは特に周りを気にすることなく座っている。

「うん、なら、あの中にいたとしても子供のエイプだけだろうさ」

「その、子供のエイプは、殺すの?」

「もちろんさ。依頼書にもそう書いてあったろ?あのね、親の死体を見た子供は警戒心を強め、更に凶暴な生き物になっていくんだ。だからそうならない為にも、子供だろうと生かしてはおけないのさ」

分かっていたことだがディーンは確認せずにはいられなかった。


「だからね、あたしが行くんだよ。あんた達二人にはまだ刺激が強すぎるからね」

冗談ぽく言うヴェラだったが、それは二人に対する優しさだった。

無抵抗に殺される生き物が自分を見る目、怯えた目、憎しみを込めた目、それに対峙して平気でいられるほど二人はまだ擦れていないのだ。


じゃ、行ってくるよ、と川へ行くときと変わらない様子でヴェラは洞窟へと入って行った。

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