第14話
今日も天気に恵まれ、岩の上で待つ二人は他愛もない話をしている。
アーマードの町を一旦北に出て、石窟のあった沼地一帯を迂回する形で伸びる街道を西に向かう。
町を出て数日後、町と沼地の深部を繋ぐ街道沿いにある拠点、第一中継基地へと辿り着いた。
そこは元は閑散とした村だったが、沼の深部の開発の為に中継基地として選ばれ、今では過去の面影がないほど栄えている。
村の人間の収穫物は中継基地で商人が買い取り、村人はそのお金で必要な物を依頼し、次回の物資輸送の際に町から取り寄せてもらう。
そうやって経済が回り始めると、どこからそれを知ったのか続々と人が集まってきたのだ。
その第一中継基地からしばらく北に歩き、ファングの案内に任せ辿り着いたのがこの湿地帯だった。
先程討伐したジャイアントエイプ達は、これまで幾度となく輸送されている物資を奪い、その為に討伐の対象となった。
オーガ程ではないにせよその動きには慣れておいた方がいい、というヴェラの提案で一つ目の依頼がこれに決まったのだった。
「戦ってみて、どうだった?」
アッシュが左手を開いたり閉じたりしている。
その手はエイプの攻撃でまだ少し痺れていた。
「特に難しい相手だとは思わなかったよ」
「そうだな、先にオークと戦ったからか、あの大きなエイプと対峙しても緊張はなかったな」
転がるエイプ達を見て、ディーンがある事に気が付いた。
「先に倒した三体、あれは全部雌で、最後のエイプだけが雄だったんだね」
倒れるエイプの体の大きさの違いは、どうやらそのまま性別の違いになっているようだった。
「そうか、だからヴェラのやり方に怒りはしても、怖がることはなかったんだな」
ゴブリンやオーク等の魔物と違って、ジャイアントエイプはそういった「生き物」だ。
依頼の為に他の生き物を殺す、その事に少しだけ心が重くなる二人だった。




