第10話
「間違いない、先生だ」
ヴェラの話すガレアがアッシュ達の村を訪れたというのなら、それは二人の知るガレアで間違いなかった。
「そっか、先生は冒険者だったんだね」
「てことはやっぱりあんた達の先生っていうのはあのガレアなのかい?」
どうやらそのようだと、アッシュが頷く。
「すごいね、ガレアの弟子になれるなんてあんた達の家は大層な金持ちなんだね」
「いや、そういうわけじゃないんだ」
ガレアの弟子になったきっかけはそんな理由ではない、しかしアッシュはその事をなかなか言い出すことができなかった。
「僕達は、その竜に焼かれた村の生き残りなんだよ」
そんなアッシュを見て、ディーンが変わりに答えた。
「なるほどね。そうかい、だから竜の情報を欲しがってるんだね」
そういうことだ、と頷くアッシュにヴェラが問う。
「竜を探して、どうするつもりだい?まさか倒そうなんて思ってる訳じゃないだろうね」
ヴェラは酒に口をつけたまま続けた。
「村1つ簡単に焼き尽くすような生き物なんだろ?そんなのを相手にするなんて、殺されにいくようなものさ」
「ああ、今の自分達じゃ何もできないことは分かってる。ただ、だからといって見つけるのを諦めるつもりもないんだ」
そう言うとアッシュも一気に酒を煽る。
「そうかい。まぁ無茶をしようってんじゃないなら、あたしも協力するよ。王都の知り合いはきっちり紹介してあげるからね。楽しみにしときなよ」
「でもどうして先生は冒険者を辞めてまで僕達に戦う術を教えてくれたんだろうね」
ディーンはヴェラなら何か知っているのではと思い、話を振った。
ヴェラが少し考え込み、それに答える。
「あたしも詳しい話は知らないんだけどね、ガレアほどの冒険者が商隊の護衛をするようになったのには理由があるらしい」
カヴァルの爺さんなら何か知ってるかもしれないね、と言ったあと、でもね、とヴェラは続ける。
「すまないけど今は明日からの旅に集中しておくれよ。無事に帰って来れなくちゃあ知ることもできやしないよ」
その言葉にアッシュとディーンは頷く。
「よし、そうと決まれば今日は食べるよ!明日からしばらくまともな食事はできないからね!」
止まることなく飲み続けるヴェラの相手をしながら、夜は更けていったのだった。




