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イシュト大陸物語  作者: 明星
力の証明
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第8話

現在人の立ち入っている沼地の最奥まで、アーマードからかなりの距離があるということだった。

また、難易度の高い依頼になるとその調査も難しいものとなり、不測の事態も起こりうるとのことだ。

本来であれば依頼書の不確かな部分は己の経験を生かし対応する必要があるのだが、三人にはまだそこまでの経験がない。

くれぐれも気を付けるように、と重ね重ねカヴァルは言ったのだった。


「まだ依頼を受けただけだっていうのにずいぶんと気が重いよ」

酒場の机に突っ伏してヴェラが嘆く。

「長い距離を歩く旅になります。途中で三つの依頼をこなし、最後に一番大きな依頼をと考えると、町に戻ってこれるのはいつになるか分かりませんからね」

そんなヴェラを見て、笑いながらディーンが言った。

「それもあるけどさ、あんた達分かってんのかい?カヴァルの爺さんがやれって言ってきた依頼、相手はオーガだよ、オーガ」

そう言ってヴェラが机をバンバン叩く。幸い周りには客の姿はなく、ただ店員の好奇の目が向いただけだった。

「オークなら倒したことがある」

「全然違うよ、おバカ」

アッシュの発言に対してにべもない。

「いいかい?言っちまえばオークは巨大な豚だ、力任せな攻撃にさえ気を付けとけばいい。オークを倒してこいってんならそりゃあ楽なもんさ」

「楽なのか?」

アッシュにとって強敵だったオークを楽だと言うヴェラが意外だった。

「オーガに比べるとって話さ。まぁカヴァルの爺さんの言うようにオーガに出会うまでにいろいろと経験をしとかないといけないね。一応その為の依頼を選んだつもりだし」

そう言って酒を一気に煽ると、ヴェラは店員におかわりと叫んだ。

「ヴェラさんはオーガと戦ったことはあるんですか?」

「1度だけね。遺跡の探索に出た帰りに文字通り降ってきやがった。その時は他の冒険者達と一時的に手を組んでたからね、8人がかりで戦ってようやく追い返したのさ」

運ばれてきた酒を一気に煽り、思い出したようにディーンに言う。

「ああ、それと、あたしのことはヴェラでいい。あんたのその真面目な言葉遣いもいらないよ」

女性に対して砕けた口調で話す、ディーンはそういうことが苦手だったが、何とか言われたとおりにしようと努力をし、「わかったよ、ヴェラ」とディーンは微笑んだ。

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