第2話
「あいつはこんなものを母親に飲ませたっていうのかい」
ヴェラは気味悪そうに黒い液体を覗きこんでいる。
「ふむ、まぁ普通の人は魔物の死骸なぞ目にする機会はないだろうからね。しかし、そうなるとますますこれの正体が分からなくなった」
カヴァルが水の中から石を拾い上げ、黒い水は組合員へ捨てるよう命じた。
「ただの石ならばアレティアで何か分かるかと思ったのだが…」
「アレティアというのは、北の町ですね」
大陸の北に位置する町、アレティア。その北部に広がる山脈から採れる鉱石を中心に栄えた町。
「しかしこれが石でないのは明白。となるとだ、一度王都へ赴き中央の冒険者組合へ協力を依頼するべきか」
とカヴァルは顎に手を当て独りごちた。
「あそこには大陸各地からの情報が集まってきている。それに中央の冒険者組合の下、正式な依頼となれば各機関も調査協力を無下にはできない。となれば、だ」
カヴァルは組合員に呼び掛け、手の空いている冒険者達を選び出すように指示を飛ばした。
「ちょっと待っておくれよ」
しかしヴェラがそれを止める。
「それは、その石はあたしにとって仲間の仇なんだ。あたしに任せてはもらえないかい?」
ヴェラが石を受け取ろうと手を突き出す。
だがカヴァルの返事はヴェラの期待したものとは違っていた。
「すまないが君に任せることはできない。これは冒険者組合の長としての判断だよ」




