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イシュト大陸物語  作者: 明星
館に蠢く
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第18話

岩の建造物の頂上へと続く階段を、ディーンが駆け上る。

途中いくつか左右に部屋があったが、乱雑に荷物が置かれているだけで魔物の姿はなかった。

一気に駆け上がり頂上に出ると、速度を落とさず岩の端まで走り抜いた。

振り返ると階段の出口で待ち構えていたゴブリンが、剣を降り下ろしていたところだった。


状況のわからない戦場へ飛び込むときや多数を相手にする場合には動きを止めてはいけない、これは傭兵の教えの一つであった。


剣を降り下ろしたゴブリンへと走りながら周りを確認する。

他に二体。一体は階段の向こうで、雑草の中に立っており、もう一体は更にその奥、木の陰に隠れるようにしてこちらを見ていた。


急に距離を縮められ慌てて剣を振り回すゴブリンに二度細剣を突き立て、剣先を捻る。

そのまま駆け抜けもう一体のゴブリンの首を切り裂いたところでディーンは動きを止めた。

改めてみると建造物の頂上は広かった。

そこは村の広場ほどの広さがあり、雑草が生い茂り、木が密集している場所もある。いくつか池とは言い難いが水溜まりもあり、ちょっとした空中庭園のような場所になっていた。

未だその木の陰からこちらを伺うゴブリンは頭に動物の骨をかぶり、顔には化粧のようなものを施している。

ゴブリンの祈祷士は外へは逃げず、頂上に出てそこから周辺の様子を見ていたのだ。

ディーンが辺りを警戒しながら近づく。

護衛を倒された祈祷士はディーンを威嚇しながら、何かを投げつけてきた。

それはアッシュに落としたものと同じ、壺だった。

ディーンはそれを防ぐのではなく、左右に避けた。ここでもやはり、動作の大きいゴブリンの動きを見極めるのは容易かった。

二個、三個と飛んでくる壺を避けながら徐々に距離を詰める。

五個目の壺に手を掛けてゴブリンが顔を上げたとき、目の前にはディーンが立っていた。

驚き、木々の間へ逃げようとするゴブリンの背中に細剣を突き立て横になぎ払う。

叫び声を上げて醜い生き物はその場に倒れると、必死で逃げようと這いずるが大した距離を進むこともできないうちに息絶えたのだった。

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