第17話
石窟と大量のゴブリン。
依頼書を確認した時から、狭い空間に乗り込んで戦うということは考えていなかった。
二人が望む戦い方は、少数を各固撃破することであり、如何にその形に持っていくかが重要だった。
建物の形がどうであれ効果はあるだろうということで燻りだすことは早々に決まったし、幸いアーマードでは燃料の泥炭を安く買うことができた。
今二人の目の前には次々とゴブリンが飛び出してきている。
最終的にアッシュの方には六匹、ディーンの方には五匹のゴブリンが飛び出してきたことになるが、慌てふためいているゴブリンを倒すことは容易で次々と斬り倒していった。
今はもうアッシュの側にいる二匹が最後だった。
状況を理解したゴブリン二匹が、洞窟のゴブリンとは違い、同時に襲ってきた。
しかし、これまでの戦いで分かったことだが、知能のせいなのか骨格のせいなのか、おそらく両方なのだろうがゴブリンの太刀筋の種類は少なかった。
縦切り、なぎ払い、突き、およそこの三つしかなく、振りも大きい為に動きを見切ることは容易かった。
錆のひどい片手剣を振りかぶりながら近づいてくる左のゴブリンへ力任せに円盾をぶつけ、顔面を殴られたゴブリンがたたらを踏んでいる間にもう一匹のゴブリンの頭に手斧を降り下ろす。
勢いよく振り落とした手斧は、がむしゃらに防いだゴブリンの両手を切り落とし頭を砕いた。
手斧は刺さったままにして逆手で腰から片手剣を引き抜くと、正気に戻ったゴブリンの胸へと突き刺した。
剣を引き抜き手斧を拾う。
その時だった。
「アッシュ! 上!」
ディーンの声に反応して岩の建造物の頂上を見上げると、そこから何かが落ちてきていた。
慌てて円盾を構え防ぐ。
円盾にぶつかり何かが割れる音が響き、液体が飛び散り顔に掛かった。
声にならない悲鳴をあげて、アッシュがうずくまる。
目が、焼けるように熱い。
ディーンの近づく足音がする。
「う、上にまだ、いる」
液体を被る直前見えたのは、太陽を背に立つ何かだった。
「わかった。これを」
ディーンはアッシュに腰から外した革の水筒を渡す。
アッシュは必死に水を目に掛けて、正体の分からない液体を洗い流した。
「アッシュはここにいて」
アッシュをお願い、とファングに言うと、ディーンは岩の建造物の頂上に向かって駆け出した。




