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イシュト大陸物語  作者: 明星
森に潜む赤
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第3話

街道を進むこと2週間。昼はのんびりと移動し、日が暮れると荷馬車を街道の脇に停め、野宿の用意を終えるとアッシュ達三人はガレアの指導のもと、鍛練に勤しんだ。

それは基本的な体力作りから始まり、 同じ動きを繰り返す型の練習、そして相手を変えながらの地稽古などで、夜遅くまで続くこともあった。日が落ちても鍛練を行う彼等を奇異の目で見るものもいたが、三人にそんなものを気にするような余裕はなかった。


これから向かう、大陸の南部一帯を覆う広大な原生林には荷馬車を持ち込むことができず、徒歩での移動となる。そしてそこにはどんな危険が潜んでいるか分からない。

更にそこを抜け、赤い竜を見つけ出したとしても、突然襲ってこないとも限らないのだ。

今こちらに赤い竜と戦う意思はなく、まずは話を聞きたいのだが、相手がどう出るかは全く分からない。

森に入り竜を見つけ、話を聞き無事に戻ってくる為にも、アッシュ達は一日たりとも無駄には出来なかった。


それから更に数日が経つ頃、街道は二手に別れた。右手に伸びる街道は河を跨ぐ橋を掛け、原生林沿いに真っ直ぐに西へと伸びている。

それはアッシュとディーンがレディングでカーマインと別れ、アーマードに向かう為に通った道だった。

「なんだか随分前のことのように思えるな」

西の伸びる街道の先を見つめながら、アッシュが言う。

「そうだね、いろいろなことがあったからね。そう言えば、アーマードに向かう途中だったよね」

僕達が初めて魔物と戦ったのは、とディーンは笑った。

「ゴブリンだけならって向かったのに、オークがいてさ。君はボロボロにやられて、僕は家畜の死骸に隠れたりしてさ」

今では当たり前のように戦えているが、あの時はゴブリン一匹倒すのにも緊張していた。オークが洞窟の奥から出てきた時は軽く死を意識するほどだった。

「あれ、覚えているか?」

アッシュ自身、今思い出したかのような表情で言う。

「オークを倒して奥を調べただろ?あの時に壊れた防具を見つけたの、覚えているか?」

アッシュに言われ、ディーンは記憶を巡らせる。

洞窟の広間を流れる小川で体を洗ったあと、二人はオークが出てきた場所から奥へ進み、その行き止まりで色々な物が乱雑に積まれているのを見つけた。

「その中に、あったね。何かに引き裂かれたような傷がついた帷子が」

それを見てアッシュとディーンは予想したのだ。オークとゴブリン達はその傷をつけた者から逃れてきたのではないかと。

「そういう生き物が、あの森の中にはいるんだな」

話をしている間に随分と近づいた森を見つめ、アッシュは呟いた。


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