第16話
天気のいい午後。
立ち続ける退屈な時間。
隣のゴブリンは先程から飛び跳ねるこぶし大のカエルに気をとられている。
ふと目の前の岩陰に揺れるものを見つけた。
尻尾のように見えたそれはすっと隠れてしまう。
爬虫類や両生類、虫の食事には飽きていた。犬だとしたら御馳走だった。
ゴブリンは歩きだす。
隣でカエルを見ているゴブリンは、ご馳走に気付いていない。
歩き出したゴブリンの頭の中は肉のことでいっぱいだった。
周りに気を配ることなく無造作に岩の裏へと回る。直後、頭に剣の一撃を受け、ご馳走にありつくこともなくあっさりとゴブリンは絶命した。
カエルを見ていたゴブリンの耳に水の跳ねる音が聞こえた。
隣を見ると先程までいたはずのゴブリンがいなかった。
名残惜しそうにカエルから目を離し、前に歩き出したその時、不意に後ろから喉を貫かれたゴブリンは声を出すこともできず、その場に倒れた。
「上手く誘い出せたな」
アッシュがファングの頭を撫でるが、そのファングはというと、尻尾を囮に使われたことに不服そうな顔をしている。
ディーンに合流すると、彼は既に次の準備を始めていた。
石窟の入り口から頂上まで伸びる階段。その一番下に町で買ってきた泥炭や枯れ木を置き、その上に生木を大量に乗せる。
「火をつけるよ」
ディーンが着火し、少し待つ。
煙が出始めたのを確認してから2人は左右に別れ、岩の建造物を回り込む。
それぞれが点在する窓の下に位置取り武器を構え、そのまましばらく待っていると、岩の建造物の中からバタバタと音がして何匹かのゴブリンが飛び出してきた。




