表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
イシュト大陸物語  作者: 明星
傀儡の王
256/408

第33話

リザードマンの肩口に振り下ろした斧槍を引き抜き、アッシュが後ろを振り返る。

先程までいた10数匹のリザードマンは全て倒され、早いものは既に黒い粘液へと変貌し始めていた。


夜が明け、水場を出て3つ砂丘を越えると、周辺は白い結晶に覆われた、固い地面へと変わった。

カーディフの東に広がる、大陸で最大の塩の産地。塩湖と呼ばれるこの場所は見渡す限りが広大な岩塩地帯だった。

「地表に湧き出す水はすぐに蒸発するんだそうです」

湖というのに水がないことを不思議に思った一向に、ライアンが説明した。

「今はこの程度ですが、ひどい時期には空気が歪んで見えるほど暑くなりますからね。でも暑さが和らぐこの時期、日によっては薄く水が張ることがあるんです」

その為この辺り一体は塩湖と呼ばれることになったという。

そんな説明を聞いていた時、ファングが耳を動かし塩湖の彼方を睨み付けた。

皆もファングが睨む方向を見つめると、黒い影が一つ、二つと増えており、その数は最終的に10を越えた。

二足で歩行するその影を、初めは商隊か冒険者の一団かとも思ったが、ファングの反応を見るに、あれは敵なのだと判断した。

歩いてきていた影はこちらに気がつくと走りだし、近づくにつれそれがリザードマンの集団だと分かった。

「構えろ」

ガレアの号令でアッシュとバルドが前に出て、ガレアに並ぶ。

ディーンはその後ろにつき、ヴェラとライアンは後衛にまわった。


リザードマンの持つ武器は様々で、中には人間が使うような鉄製の物も見受けられた。それは前回の戦いで冒険者が退散する際に放り捨てたものだった。

世に物が出回り豊かになる反面、それを大切に扱わない者のせいで面倒が増える。

アッシュはその、鉄の剣を持つリザードマンに狙いを定め、駆け出した。

手前を走るリザードマンに斧槍を振るい道を開けさせる。盾を構えるリザードマンには自分の盾をぶつけ、爪を引っかけて引き摺り倒した。

そうして敵を撹乱しながら一番奥にいたリザードマンを倒し振り向くと、既に戦いは終わっていた。


「やっ、やった」

ライアンの顔が紅潮している。

「俺も、やりました」

アッシュは見ることが出来なかったが、リザードマンの一匹をライアンが倒したらしい。

「いい突きだったよ」

ディーンがライアンの震える肩に手を乗せる。

リザードマンの身に付ける粗末な防具の隙間を上手く狙い、急所を突いたのだ。

これなら自分達が戦っている間、リザードマンの接近を防ぐことができる。そう思い、ディーンはライアンへ頷いてみせた。


その後も2度、同じ規模のリザードマンの集団と出会い、これを撃破した。

その時にもライアンは2匹のリザードマンを倒し、更に自信をつけていた。

「リザードマンの数は100を越えるという報告がきていました」

一度目の討伐作戦の際には200を越えるリザードマンがこの地に蠢いていた。

それを50数名の冒険者で半数ほどまで減らしたが、蜥蜴の王に攻撃が通じず撤退を余儀なくされた。

そして今もまた、リザードマンはその数を増やしているが以前ほどではなく、その数は150ほどであろうと組合員は言った。


「リザードマンが周回してるのなら、先に数を減らした方がよくねぇか?」

そんなバルドの提案に皆が同意した。

水場は近くにあるし、食糧は往復8日分積んである。とはいえ実際は、万が一を考え8日分よりも余裕を持って積まれているし、冒険者の彼らは食事を節約する術を身に付けているため、1日や2日はどうとでも凌ぐことができる。

一行はその日1日、蜥蜴の王のいるリザードマンの棲みかの手前で荷馬車を止め、遭遇するリザードマンの集団を倒すことに専念した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ