第14話
街道を東に進むにつれ、少しずつ空気が乾いてきているのが感じられた。
「今俺たちが向かっているカーディフの東にはとても広い砂漠が広がっているのだがね、俺はそこが昔から砂漠だった訳ではないと思っている」
過去、冒険者によって砂から掘り起こされた建物の残骸の中には、砂漠では使いようのない農具が見つかり、逆に砂漠で水を貯めておくために必要となる水瓶の類いはなかったという。
「この大陸も一見変わっていないように見えるが、そうじゃない。少しずつ変化しているんだ、良くも悪くもね。君達が討伐依頼を受けたその、蜥蜴の王というリザードマンも、そういった変化の一つなのかもしれないね」
アクルゥに自分達が受けた依頼の内容を話すと、返ってきたのはそういった反応だった。
「それは、随分と迷惑な変化ですね」
ディーンがアクルゥの話に苦笑する。
「そうだね、しかしそれは人間にとっては、という話でしかない。彼らリザードマンもただ生きていく為にそうせざるを得ないのだとしたら、彼らにも罪はないことになる」
「とはいえ放っておくわけにもいかないだろ?生き方の違うものが出会えばどちらかが消えるしかないんだ」
沼地でエイプの親子を倒した時もこんな話をしていた。
「もちろんだ。そうして勝ったものが生き残り、今この大陸では人間が一番栄えている」
しかしね、とアクルゥは続ける。
「これからのことは分からない。その蜥蜴の王と呼ばれるような存在が数多く現れるようになれば、いつの日かこの大陸は魔物のものになるかもしれないね」
そんなアクルゥの話を聞いて、ディーンはふと思うことがあった。
あの夜会ったカティナは、自らを魔物ではないと言い、魔物をその言葉で呼ばれることを嫌っていた。
そして第3中継基地の話をした時に、人に被害を及ぼさないように言い聞かせたとも言っていた。それはおそらく灰色のオーガのことだ。
ディーンは次にカティナに会ったときに、聞こうと決めた。
「君とあの者達はどういった関係なのか」と。
彼女の嫌う、魔物という言葉は使わずに。




