第1話
「それは、間違いないのですか?」
王都へと戻ったアッシュ達は、まずギムを家に送り届けた。ギムの娘は依頼達成の報酬を渡そうとしてきたが、それは辞退した。
ギムにはそれ以上のものを貰い、王都を出るまでにおまけも用意してくれると言うのだ。それだけで十分だった。
その後冒険者組合に立ち寄り、黒い石の結果報告を行った際に、アッシュ達は思いもよらない話を聞くこととなった。
「ええ、間違いありません。皆さんが王都を出て、しばらくしてからアーマードの町より使いの者が来ました。その者が言うには、沼地に建設中だった第3中継基地は灰色のオーガの襲撃を受け壊滅、人々への被害は軽微ではあるものの基地自体は破棄することになった、ということです」
机の上に肘をつき、手を組んだレジエスが沈痛な面持ちで言った。
「バルドさんや、オーエンさんは無事なのでしょうか?」
第3中継基地で冒険者組合の仕事を代行していたバルド、アーマードを出る前灰色のオーガ討伐の依頼を受けたオーエン、彼らの安否が気になった。
「死者が出たとの報告は受けていません。しかし負傷者がいないということもないでしょう」
特異個体が相手では、とレジエスは続ける。
「実は王都の冒険者組合が中心となって進めていた蜥蜴の王討伐作戦、これも失敗に終わっています。特異個体を相手にいいようにやられているのが現状です」
「そちらも、駄目だったんですか?」
あれだけの数の冒険者を集めても倒せない蜥蜴の王という魔物は、一体どういった魔物なのか、アッシュ達には想像ができなかった。
「ええ、リザードマンの数を減らすことには成功しましたが、蜥蜴の王相手には文字通り歯が、いえ、刃が立たない。分厚く着こんだ金属の鎧に、我々の攻撃は全て弾かれてしまいました」
お手上げです、そう言いながらレジエスは椅子の背もたれへと深くしずんだ。
「今は蜥蜴の王討伐作戦の第2陣を募集しているところですが、なかなか集まりません。私はやはり皆さんに頼るしかないと思うのですが、どうでしょう?北の山脈の魔人を倒した皆さんなら、蜥蜴の王を倒せるのではないでしょうか?」
アッシュ達は冒険者組合を出ると途方にくれてしまった。何から始めればいいのか、今自分達は何をするべきなのか、決めかねているのだ。
「ひとまず宿に戻ろうよ。これからどうするかは、ご飯でも食べながら決めないかい?」
そう言うディーンの提案に2人は頷き、彼らは宿へと向かうことにした。




