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イシュト大陸物語  作者: 明星
残穢
221/408

25頁

決めました。

憎まれてもいい、恨まれてもいい。憎んで欲しい、恨んで欲しい。

私は彼女に危険を伝えることはしないと、決めました。


今は青年となってしまったあの二人が、ここを訪れて彼女を失い、山を去った後、私は二度と彼らを視ることはできないのではないかと思いました。

今まで視えていた理由が、彼らが彼女と出会いここに来るからだとしたら、この後はもう視る必要がなくなるから。


嫌だ。せっかく一人で生きてきたのに、せっかく耐えてきたのに、長い間あんな画を視せられ、そして取り上げられるなんて、私にはもう、耐えられそうにない。一人には戻りたくない。



誰がこんなことを始めたのでしょう。

昔お母さんから聞かせてもらった、この大陸を治めた王様の話。その王様が夢で授かったという力は、私のとよく似ています。

一人の青年を王へと導いた存在。私達を竜へと導いた存在。そしてあの青年達を私の元へ導く存在。

悪意だけの存在だとは思えません。現にその存在によって助かった命は数多くあります。私の命もその一つ。しかし善意だとも思えません。善意だとしたら、あまりにも残酷すぎる。悪意のない悪、私にはそれが一番しっくりくるように思います。



遂にその時が訪れようとしています。明日、彼らは地下の川を流され、その先の洞窟へと流れ着きます。

崖の拠点から必要なものは持ってきました。顔を見られる心配のない服も見つけました。少しまともな声を出す練習もしました。川に流され冷えた体を温めるためにお茶も用意しました。私はうまくお話しできるでしょうか、嫌われないでしょうか。いえ、最後には嫌われるのですから、心配しても仕方のないことです。



彼らは視えていたままでした。黒い髪の男の子はお話が苦手で、茶色い髪の男の子はとても優しい。天幕の中で眠る彼らはまるで初めて視た時の少年のようです。私には兄弟はおらず、子供も持つことはできませんでしたが、小さな頃から視ている私にとって、彼らは弟のようであり、子供のよう。あなた達にも嫌な思いをさせてしまいます。本当に、ごめんなさい。



今から拠点を目指します。朝、少しでもいい思い出を残すために、私の最後の思い出を作るために、あの大きなお魚と朝陽を見に行きました。これでもう、何も思い残すことはない。

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