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イシュト大陸物語  作者: 明星
残穢
220/408

24頁

あっという間に私は彼らに歳を抜かれ、彼らは立派な青年へと成長しました。

訓練の最中、結局一度も傭兵の方に勝つことはありませんでしたが、ある程度の力を認められ、どうやら彼らは旅に出るようです。



危なかった。たった二人で魔物の棲みかに攻めいるなど無茶もいいところです。彼らは小さな魔物だけを相手にするつもりだったのでしょうが、突然現れた大きな魔物に危うく殺されてしまうところでした。黒い髪の男の子は、成長しても無茶なところは変わっていないようです。



沼地の魔物を倒した後、彼らは女性に出会いました。綺麗な赤い髪の女性。とても羨ましい。

いえ、羨ましいなんて言ったら怒られてしまいそうですね。彼女は仲間を失いました。正体の分からない黒い石に関わることによって。



どうやら黒い石の正体を探るために彼らは実力を示さなくてはならないようです。

沼地の奥に住む大きな魔物を退治するため、旅をしています。

三人はとても仲がよく、楽しそう。

私も彼とあの方と旅をしていた時の事を思い出しました。とても楽しかった。もっと、一緒に旅をしたかった。



またも、彼は無茶をしました。皆を逃がし、自分だけで大きな魔物に立ち向かったのです。結局彼は殴り飛ばされ、気を失いました。その後画が乱れ、次に視えたとき、彼は生きていました。何が起きたのか分かりません。一瞬あの、私達が竜へと赴く事となったきっかけを作ったあの影が視えたような気がしました。気のせいかもしれませんが。



ここのところ、視える間隔が短いように思います。

彼らは町に戻り、その後王都を目指して街道を進んでいます。

立ち寄った村で出会うのは優しそうな男性と、活発な女の子。

しかしその男性の持つ首飾りはただの首飾りではありませんでした。男性の理性を奪い、生き物を殺させ、血を、生気を奪い、首飾りは刀へと変貌しました。

その刀を、私は視たことがあります。

勇者の一人が、持っていました。

なぜ、今また、勇者でもない、ただの村人が、それを持っているのでしょう。



幼い頃から彼らを視てきました。見守ることもできず、ただ視ていただけです。

今になって、その理由が分かりました。

彼らは最終的にここへと辿り着くことになっていたのです。運命?いいえ、私は違うと思います。

そう、仕向けられたのではないかと、私は思うのです。

昔私達がそうであったように。戦う力を、守る力を求め、祈り、授かった力でこの北の山脈に住まう竜を目指したように、彼らはここへ来るように仕向けられたのではないかと、思うのです。

竜への復讐を望み、彼らは旅に出ました。そして出会った赤い髪の女性。彼女によって黒い石に関わり、王都へと訪れました。そこで出会った男性は、あの兵士さんの子孫。私を探しているその男性と共に北の町を訪れ、今彼らはこの山脈へと向かっています。

誰かが、何かがそうさせている気がします。私達も、彼らも、自分達が決めたと思った選択は、それを選ぶように仕向けられていただけ。誰が?何の為に?



私が今まで生きてきた理由が、ようやく分かりました。あの赤い髪の女性、彼女にこの力を引き継がせる為でした。

視えたのです。彼らが羊頭の魔物と戦い、地面が崩れ、地下の川に流される。そこから拠点へ戻る最中に、彼女は羊の魔物に殺されます。しかし、私がこの力を移すことで彼女は死を免れるのです。


そして、私は、ようやく死ぬことができるようです。

事前にこの事を伝えれば彼女は酷い目に会わなくて済みます。しかしそれでは私の力を移すことができません。

力を移したところで、彼女に幸せが訪れる訳ではありません。一命をとりとめても、待っているのは死ねない未来です。


私は、いったい私は何を選べばいいのでしょうか?私は私の為に人を不幸にしようとしている、それは決して許されないことだと分かっているのに。

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