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イシュト大陸物語  作者: 明星
残穢
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5頁

四日目

昨夜の話を不思議に思い、どうしてその冒険者の依頼が物探しだと分かったのかと聞いた。聖女様の力によるものなのだろうと半ば確信を持ちながら。

しかし聖女様の答えはそうではなく、その答えに私は笑うと同時に感心してしまった。

聖女様が視た明日の出来事というのは、単に先程その冒険者が大声で話していたことなのだと言う。

たくさんの人の中で、自分の話が誰かに聞かれていることを意識していない場合、その声はとても大きなものになっている、それが聞こえただけなのだと。

実際には聖女様はその話し声や話し方から冒険者の体格や依頼に対する熱心さを視たにすぎず、そこから探し物が見付かるはずだと予想しただけだと言うのだ。魔物の襲撃に関しては、気にするに越したことはないし、もしも襲撃がなければ、それはあなたが気を付けていたからだと言い逃れができるとも言った。

私は自分を恥じた。聖女様は純真無垢で気高く、完璧な人間なのだと勝手に思っていたからだ

この話をする時の聖女様はとても無邪気に笑っておられた。しかし私は思う。そうすることが生き残るための唯一の手段で、それをする為に聖女様はきっと必死だったのだろうと。

長くなったが本日の聖女様のお話を以下に記す。



私のこの力は正体が分からず、自分の視たいものが視えるわけではありません。

しかし冒険者の方々とは非常に相性がよかったのだと思います。

最初の探し物の件はズルをしましたけど、その後の冒険者の方からはきちんと話を聞くことで自然と頭の中に絵が浮かび上がるようになりました。

その冒険者の方の実力が依頼の内容に伴っていれば成功している姿が、そして伴っていなければ悲惨な最期を迎える姿が視えるのです。

そうしてしばらくは順調に占い師として仕事をしていたのですが、そのうちに問題が起こりました。

結果が必ず当たることでその結果に甘え、本来なら成功する依頼にも関わらず、実力を出しきらなかったことで失敗し始める方が増えてきたのです。

私は人の結果を視るばかりで、その人のことは全く視えていなかったのだと初めて気が付きました。

ですから私は、その町を離れることに決めたのです。

酒場に来る方の中から町を出る商人を見つけ、その商隊に参加させて欲しいと頼みました。見返りとして私が道中の安全を視るからと。

あの町では多少名の知れた占い師になってましたので、商人は喜んで引き受けてくれました。


そして翌日、私はその町を離れ、その後あの方に出会うことになります。

皆様が剣の勇者と呼んでいる方です。

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