第4話
大陸には多数の村が存在するが、町と呼べるのは王都を除くと四つ。
その一つが大陸南西に位置するアーマードである。
西側に広がる広大な湿地帯には様々な効能をもつ草やキノコなどの植物が群生し、アーマードの交易品となっている。
また湿原から採れる泥炭も、大陸に住む人々の生活を支える貴重な産出物である。
「こんなところで下りてもらって、本当にすみません」
そのアーマードまでもう少しという場所で二人は荷台から降りた。
あくまでも二人はニール個人に雇われている。
本来商人のみで済む行商に護衛を雇ったという事実が商人組合に露見してしまうと、ニールはまた見習いに戻されてしまう恐れがあったからだ。
「いえ、ここまで乗せてきて頂いただけでも十分ですよ」
ディーンが笑顔で答える。
あの後ニールの操る荷馬車は何者からも襲われることなく無事アーマードへと辿り着いた。
実際には何度か荷馬車に近づく影があったのだが、遠巻きに護衛するファングに気配を察知されて、荷馬車に近づく前に逃げ出すか殺されている。
「本当にお世話になりました。こちら、僅かですがお礼です」
ニールはそう言うと懐から革袋を取りだし何枚かの硬貨を差し出した。
「こんなには頂けませんよ。護衛とはいえ何もしてませんし」
ニールが出した金額はここまでの距離を考えると破格のものだった。
辞退しようとするディーンにニールが笑いかける。
「ではこうしましょう」
ニールは荷馬車の後ろを見て続けた。
「これはあの狼さんへの報酬です、何かおいしいものでも買ってあげてください」
ニールの視線の先には見習いの少年に腹を撫でられ困った顔をしているファングがいた。
「この先、護衛なしで大丈夫ですか?」
ファングの姿に苦笑しながらアッシュが聞く。
「いえ、アーマードから先は少し物騒になりますからね、実はこの先の村で護衛をしてくれる人達と合流する手筈になっているんです」
これはきちんと組合を通した護衛なんですよ、と補足して、それにその人達はと言いかけたニールは「いえ、何でもないです」と照れたように笑った。
二人はニールと握手を交わし、ファングは少年に抱きつかれ、それぞれ別れを告げたのだった。




