第22話
先頭を走るゴブリンが六匹、その後ろを二匹のオークが歩いてきている。
四匹のゴブリンが集団から抜け出し、岩の間を縫うように駆けてくる。
アッシュが手斧を握り鍛冶屋でもらった盾を構え、ディーンは黒剣を抜くと両手で構えた。
「来るぞ!」
足場の悪さなどものともせず、猛烈な勢いでゴブリンが襲いかかってくる。
振り回す武器は恐らくもとは人間が使っていたであろう鉄の剣。その体に不釣り合いな長さの武器をゴブリンはアッシュに向けて叩きつけてきた。
振り下ろされる剣に向かって、気合の声と共に思い切り盾を振るうとアッシュはそのまま前進した。
殴られた勢いで武器を飛ばされたゴブリンへ後続のディーンが黒剣を切り上げる。
身に付ける薄い鉄板の胸当てなどまるで無いかのように、容易くゴブリンの体を二つに裂いた。
先行するアッシュは次のゴブリンの攻撃を盾で受けると左に流し、体勢の崩れたところへ手斧を叩きつける。
走る速度を緩めずアッシュの前に躍り出たディーンが、迫る二匹のゴブリンの手首を狙って黒剣を振るい切り落とし、甲高い叫び声を上げるゴブリンの首を即座に撥ね飛ばした。
「岩の上から来るよ!」
ヴェラの声にアッシュが反応すると、左右の岩の上からゴブリンが飛び掛かってくるところだった。
「右は任せな!」
続くヴェラの声を受け、アッシュは左から飛び掛かってくるゴブリンの攻撃を盾で防ぐ。
右から来ていたゴブリンは岩から飛ぶ瞬間、ヴェラの投げた短剣に頭を射ぬかれ鈍い音をたてて落ちていた。
飛び掛かってきたゴブリンは必死にアッシュの盾にしがみついているが、背中から腰までをディーンの一太刀で切り落とされると、ズルリと盾から剥がれ落ち大地に黒いシミを広げた。
ゴブリンを倒し前を見ると、迫る二匹のオーク。
片方は両刃の斧を持ち、もう片方はその拳に鉄の爪をはめている。
「ヴェラ、周囲の様子は?」
荷台で周囲を警戒しているヴェラへ問う。
「あいつら以外に敵はいなさそうだよ」
「わかった。ディーン、左のオークを頼む。俺は斧を持ったオークを倒す」
アッシュは盾を構え一歩前に出るとファングを呼んだ。駆け寄るファングはアッシュから指示を受けると岩の影に姿を隠した。
「よし、今回は無傷で勝つ」
「うん、あの時の僕たちとは違う。やれるよ」
二人は初めてオークと見えた時のことを思い出す。目の前のオーク達の迫力はあの時と変わらない。変わらないからこそ、今のアッシュ達にとってそれほど脅威とは感じなかった。
「行くぞ!」
アッシュとディーン、それぞれがオークへ向かって駆け出した。




