第15話
「聖女はずっと考えていたそうだよ。自分に与えられた力の意味を。あの時見たものの意味をね」
そして聖女は悟った。今大陸中の平和を脅かす魔物達はあのとき見た灰色の竜によって操られているのではないかと。
そして聖女は北を目指し、その途中で剣の勇者と出会い、盾の勇者に出会った。
一行は共に北を目指し旅をする。北に向かうほどに驚異は増し、聖女は自分の考えを確信に変えた。
一行の話を聞き付けた他の勇者達や王国軍も聖女と共に北へ向かい、決戦の前には総勢二百人程が集まっていたという。
「とはいえ王国の兵士が竜と戦ったところで何も出来やしないから、もっぱら勇者達の補助に回ったらしいがね」
聖女の記憶を頼りに竜の住まう洞窟まで道を作り、要所要所に拠点を作る。物資の運搬や保存等で勇者支え、竜との戦いに備えた。
「そしていざ、竜との戦いが始まると勇者達は臆した。まぁ仕方ないよね、竜だもの。巨大でおっかない竜だもの。でもここで飛び出したのが一人の男だ。恐怖に打ち勝つ力を神から与えられた男が斬りかかったのを皮切りに、勇者達は一斉に竜へと突撃した」
竜の攻撃は聖女によって予知され、盾の勇者に防がれる。隙をついて剣の勇者を筆頭に竜へと斬りかかり手傷を負わせ竜を追い詰めた。
「洞窟の入り口で待機していた王国軍の中で、俺のご先祖さんはたいそう興奮していたようだよ。手記の文字が乱れている。さて、続きだ」
しかし竜の攻撃を予知しても、全員を守ることは出来なかった。薙ぎ倒され、喰われ、引きちぎられる。集まった勇者達が一人、また一人と死んでいくなか最後まで残っていたのは剣の勇者と盾の勇者、そして聖女だった。
後方から聖女が見えたものを伝え、それを盾の勇者が防ぎ剣の勇者が攻める。
翼を裂き、爪を、牙を折り、鱗を貫く。
長い長い戦いの末、とうとう勇者達は竜を倒した。歓喜に沸く声、勇者に駆け寄る王国軍、誰もが勝利に酔いしれていたその時だった。
竜が最後の力を振り絞り強大な炎の息を吐いた。
ことごとく竜の攻撃を予知してきた聖女も、なぜかこれは予知できず、そこにいた全ての人が炎の息に焼かれた。
「そして竜と勇者達は相討ちとなり、この物語は終わる。というわけだ」
「でもそれだと、おかしいですよね」
話を聞き終わったアッシュが口を開いた。




