第13話
「前は話してくれたじゃないのさ」
ヴェラは不満そうに言う。
「まぁあの時は俺から依頼したわけだし、今から調べるものの事を知っておいてもらった方がいいと思ったからね」
「本当に、何も教えてくれないのかい?」
「ああ、いくらヴェラちゃんの頼みでも駄目だ」
「ふぅん。あ、そう。例えばこの二人が赤い竜に滅ぼされた村の生き残りだとしてもかい?」
ヴェラが意地悪そうに言うその言葉にマーヴィンは目を見開きアッシュとディーンを見た。
「それは、本当なのかな?」
マーヴィンは顎を撫でながら平静を装っている。
「はい、僕とアッシュは竜に滅ぼされた村の生き残りです。その後村に来た行商人に拾われ、この歳まで育ててもらいました。今は竜が村を滅ぼした理由を調べるため冒険者をしています」
ディーンの説明にマーヴィンは考え込むが、ふと顔を上げた。
「アッシュ君といったね」
「はい」
「いいかい、アッシュ君。今後そういうことは先に言いたまえ。じゃないと格好つけて断った自分が恥ずかしいじゃないか」
「はい、すみません」
アッシュが下げた頭をヴェラが軽く小突く。
「謝らなくてもいいんだよ、おバカ」
アッシュとヴェラのやり取りをマーヴィンは羨ましそうに見ていた。
「さて、それでは君達が竜殺しに憧れる愚か者ではないと分かったわけだ。村を焼かれ、家族を殺されたからこそ、君達には竜の事を知っておいてもらった方がいいだろう。だから俺は俺の知っていることを君達に話すよ。ただし、その前に君達の話を聞かせてもらえないかな」
マーヴィンの言うことはもっともだと思った。話を聞かせてもらう時に自分は話したくないというのは失礼だと思った。
アッシュとディーンは互いに補完しながら、マーヴィンにあの日にまつわる出来事を話して聞かせた。




