第5話
「困ったね」
道の端に荷馬車を止め、三人は途方にくれていた。
王都へ向かう途中感じた冒険者の数の多さは、あの街道だけのものではなかった。 北からも南からも冒険者達は王都へ集まってきており、いち早くそれに目をつけた商人達の移動も相まって、現在王都の宿屋はどこもいっぱいだったのだ。
「仕方ない。先に冒険者組合へ向かわないか」
アッシュの提案にディーンが荷馬車を動かす。
まだ時間も早いというのに、通りに並ぶ酒場からは冒険者達の喧騒が聞こえてくる。商店の前に止まっている荷馬車には大量の物資が積まれ、商人達は忙しそうに動き回っていた。
ヴェラの案内で冒険者組合へ到着すると、この騒動の詳細を知ることができた。
アーマードの冒険者組合とは比べ物にならない大きさの建物へと入ると、看板を持つ組合員が立っており、その看板には「蜥蜴の王討伐作戦に参加する冒険者」の言葉と共に矢印が書かれている。
「すみません、これはなんですか?」
ディーンが聞く。
「あ、はい、現在東の砂漠で確認されている特異個体、便宜上これを蜥蜴の王と呼んでいますが、その討伐作戦に参加する冒険者を募集しています」
参加されますか?という組合員の言葉に三人は首を横に振った。
三人の目的は黒い石の正体を調べることであり、その為の協力を得るために中央の冒険者組合へやってきたのだ。
看板の矢印とは反対の方へと進むと、部屋の広さの割りにそこにいる冒険者の数は少なかった。
空いている受付へ進み、カヴァルから渡された依頼の達成証明書と、石に関する話とアッシュ達がその調査に相応しい実力の持ち主だという旨が書かれた手紙を渡す。
受け取った組合員はその二つを奥へと持っていき、しばらく帰ってこなかった。
「裏でどんな話がされてるのか考えると少し怖いね」
「やれるだけのことはやったんだ。心配ない」
ディーンの言葉にアッシュが返す。
暇を持て余したヴェラは組合の掲示板に貼られた依頼状を見ていた。
「さすがに王都は依頼の数が多いね。これなんかは今のあたし達にもできそうだ」
そう言いながらビリビリと依頼状を掲示板から剥がした。
「勝手に剥がしてしまって大丈夫なのかい?」
慌ててヴェラに声をかけるディーンに、聞きなれない男の声が返ってきた。
「そこに掲示してある依頼の難易度は低く、何かのついでに達成してもらえればいいものばかりですので、自由に受けて頂いて構いませんよ」
ディーンの疑問に答えたのは組合の奥から出てきた壮年の男だった。




