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イシュト大陸物語  作者: 明星
老齢の鍛冶師
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第3話

「元気そうじゃないか」

前方から少しずつ近づいてくるカーマインは満面の笑みを浮かべていた。

「父さんも」

「ああ、私もこの通り元気だよ。どうだね、旅は順調かね」

話したいことはたくさんあった。冒険者になり初めて見たもの、経験したこと、たくさん話したかった。

しかし互いに列に流されのんびりと話せる時間がない。だからアッシュは短く答える。

「頑張っています」と。


アッシュの答えにカーマインは大きく頷くと懐から革の袋を取り出して投げて寄越した。

「ほら、少ないがお小遣いだ。無駄遣いするんじゃないぞ」

礼を言い、アッシュは素直に受け取っておいた。

「ところで、そちらの素敵なお嬢さんを紹介してもらえないかな?」

カーマインはヴェラへ恭しく頭を下げる。

「馬上から失礼。私の名はカーマインと」

と言いかけたところで兵士から早く進めと怒声が飛んだ。

「久しぶりの再開なのに時間がなくて残念だ」

では、またなとカーマインは若干の名残惜しさを残したまま馬を進めた。


「変わらないね」

とディーンが笑う。

「父さんがいるということは」

アッシュは商隊の奥を見つめている。

「うん、先生もいるはずだね」

その二人の予想は当たっていた。商隊の最後尾に、馬に跨がるガレアがいた。

アッシュとディーンの姿を確認しても表情を変えることなく近づいてくる。

「先生」

アッシュの呼び掛けにガレアは視線だけ向けてくる。

「経験を、積んだようだな」

「はい。いろいろと。それにバルドさんやカヴァルさんにも会いました」

「そうか」

ガレアはそれだけで察した。

「教えてもらえませんか」

アッシュの問い掛けに無言のまま通り過ぎる。

立ち止まり、問い詰めたい。しかし列の流れがそれを許してくれない。

「先生!」

荷台を降りようとするアッシュをヴェラが止める。

「こんなところで降りたら兵士に摘まみ出されちまうよ」

ガレアは答えてくれない。

ろくに会話も出来ないままガレアとの距離が離れていく。今回は何も聞き出せないと諦めたその時。

「アッシュ!ディーン!」

ガレアの声が響いた。

「全員だ」と。

「お前達以外全員がそうだった」

それ以上は何も言わずガレアは行ってしまった。

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