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イシュト大陸物語  作者: 明星
啼泣
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第26話

森を出て村へと帰る。

ニコルの左手は上着を使って首から吊り下げ、魔物との戦闘中に痛めたことにした。

行き交う人達がニコルを労い、ファングに怯える。

その村人達一人一人にニコルは森にいた魔物のことを、そして今後動物の虐殺は起こらないことを伝えながらファングに寄り添い、危険がないことを示した。

そんな風にして歩くものだから一向に進まず、宿屋へ着いたのは昼をとっくに過ぎてからだった。


「あ、おかえりなさい」

宿屋に入るとリオとヴェラが談笑しているところだった。

ニコル達の姿を確認するといち早くリオが動く。

「その腕、どうしたんですか?」

心配そうに見つめるリオの頭に手を乗せニコルは微笑んだ。

「少し困ったことになってしまいました。すみませんが今日は店を閉めてください」

アッシュと視線が交差し、何かがあったのだとヴェラは理解した。


リオが店が閉まっていることを示す板を扉にぶら下げにいく。

入り口の外にいた狼に驚いたリオにニコルは危険ではないことを説明した。安心したリオが扉を閉めると、人が来ないようにする為か、ファングが閉められた扉の前で横になり丸まった。

外の音が閉ざされ、静かになった店の中でニコルが上着をほどき左手を開いた。

ヴェラとリオ、二人の驚く声が漏れる。

特にリオは初めて見る目の前の光景に二歩三歩と後ずさった。

「これは、どういうことだい?」

ちょっとごめんよと言いながらヴェラがニコルの手のひらに触れる。

その間にアッシュとディーンが事の成り行きを説明した。

「夢にお守りに凶戦士、ね。ねぇリオちゃん、リオちゃんが昨日言いにくそうにしてたことって、もしかしてニコルさんのことかい?」

ヴェラの問いかけにリオは体を縮める。

それを見たニコルは優しく微笑んだまま「大丈夫だから、なにか知ってたら教えてほしい」と言った。


「私が、知ってるのは、ニコルさんが深夜に出ていくことがあった、っていうことです」

一番最初はもうずっと昔、村の発展が落ち着いたころ。

店の経営と村の内外の問題に追われ毎日疲れきっていたニコルの負担を少しでも減らそうと、リオは店の手伝いを始めた。

店を閉め、掃除をし、計算を覚えるため勉強する。そうして毎日夜遅くまで起きていると、ある日裏口の扉が開く音がした。

リオはニコルを起こしに部屋へ行ったが姿がなかった為、ニコルが裏口から出て酒場へでも行ったのだろうと考えた。

翌朝、ニコルの部屋が相変わらず無人なのを心配したリオが裏口を出ると、そこには手を真っ赤に染めて倒れているニコルの姿があったのだった。

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