表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
イシュト大陸物語  作者: 明星
啼泣
127/408

第22話

「今日は何だか遠いな」

アッシュの呼び掛けにファングが姿を現したものの、その場所がやけに遠かった。

いつもと違うのはニコルがいるということだけ。

「怖がらせないようにしているのかもしれないね」

行ってくる、とアッシュはディーンとニコルをその場に残し、ファングの元へ向かった。


ファングの傍まで来たアッシュがしゃがみ、頭を撫でながら一言二言言うとファングは心当たりがあるのか森の中を歩き始めた。

「案内してくれるらしい」

ニコルとディーンにファングの意思を伝えるとアッシュもそのまま歩き始めた。

「狼と、話ができるのですか?」

ヴェラがそうであったように、ニコルもアッシュとファングのやり取りに驚いている。

「いえ、感覚なんだと思います。子供の頃から一緒でしたから、通じ合うものがあるんでしょう」

ファングの案内する先には何かがいるはずです、とディーンはニコルに注意を促して、二人もアッシュに続いた。


「彼は今までどこにいたんですか?」

ファングの後ろを歩きながらニコルが聞いてきた。

「俺達が人の多いところに行くときは離れた場所で待機してます。それから、ファングは雌です」

「これはすみません、名前からてっきり雄かと」

アッシュはその言葉に少し傷つく。

「しかしそうですか、皆さんが村にいる間は彼女は一人なんですね」

「どうかしましたか?」

「ええ、僕から皆に説明しますので、彼女も一緒に村に戻りましょう」

「いいんですか?」

「一人というのは寂しいものです。ファングさんさえよければ、ですけどね」

ニコルの言葉が聞こえたのか、ファングの尻尾が途端にゆらゆらと揺れ始めた。


先頭のファングがピタと止まる。

続いてアッシュが止まり、後ろの二人を手で制した。

「ディーン、頼む」

アッシュの言葉に頷くとディーンは身軽に森の中へと消えていった。

少しして戻ってきたディーンは困った顔をしていた。

「この先の泉に魔物がいたよ。たぶんあれはコボルト、だと思う」

「強いという話は聞かない魔物だな」

「うん、ただ、数が多くて」

村に魔物と戦える者はいないし、ヴェラも今日は役に立たない。

「なら俺達でやるしかないか。ニコルさんはここにいてください」

森の奥へと入っていくアッシュ達を見送りながら、ニコルはお守りの首飾りを強く握りしめた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ