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イシュト大陸物語  作者: 明星
啼泣
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第21話

二人の視線を感じ、ニコルが首飾りを持ち上げる。

「これは僕にとってお守りなんです」

紐を首から外し、ニコルはそのお守りをアッシュへ渡した。

動物の体の一部なのだろうが、爪と言えるほど太くなく牙と言えるほど曲がっていない。

「黒く尖った、棘?」

アッシュは自分でも意識することなく呟いていた。

「ご存知なのですか?」

「あ、いえ、そう感じただけです」

それほ見たことのない素材だったが、アッシュの心には何かが引っ掛かった。

「これをどこで?」

首飾りをニコルに返しながらアッシュが尋ねる。

「行商人から買いました」


村に行商人が来るようになり少ししたころ、まだまだ村の内側の問題が解決していなかった時のことだった。

行商人との取引の最中に見つけたその首飾りは、行商人自体が存在を把握しておらず何処かから紛れたものだろうと捨て値で譲ってもらったものだった。

「以来これをお守りとして身に付けているんです」

どう思う?、とアッシュがディーンを見る。

「正体の分からない物にいい物はないと思うけど、ニコルさんの夢の話も合わせて、今はまだ何も決められないよ」

「そうだな。ニコルさん、今俺達はある石を調べる為王都に向かっています。その首飾り、預けてもらえれば一緒に調べることができるかもしれません」

アッシュの提案にニコルは考え込む。今まで有事の際に心の支えとしてきた物だ。即断は難しい。

しばらく考え込んだあと、ニコルはゆっくりと口を開いた。

「わかりました。兄さんが信用したあなた達を僕も信じて、これをお預けします。危ないものではないと分かった時にはまた、お守りにしようと思います」

「ありがとう。必ず王都に届けて調べますので」

よし、という掛け声と共にアッシュが立ち上がる。

「どうしたんだい?」

「まだ全部を調べた訳じゃないからな。ファングにも助けてもらう。ニコルさんの夢はただの夢なんだと証明したい」

「近くにいるかな?」

「俺達が森に入ってずいぶん経つ。気付いて近くまで来てるはずだ」

何の話か分かっていないニコルに、アッシュは狼のことだと説明した。

それはすごい、と言うニコルの目には羨望の他に少しだけ暗い感情が浮かび上がる。

それに気付くことなく、アッシュはファングの名を呼んだ。

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