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イシュト大陸物語  作者: 明星
啼泣
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第15話

あの後たらふく酒を飲んで戻ってきたヴェラが散々リオに絡んだりと一騒動あったが、結局アッシュ達が起きている間にニコルは戻らなかった。


「あ、おはようございます」

翌朝、アッシュ達が一階へ降りると既に店は開いておりリオが掃除に精を出していた。

「おはよう、リオちゃん。昨日はすまなかったね、お姉さんちょっと飲み過ぎちまったよ」

頭をおさえながらヴェラが謝る。

「ニコルさんは戻りましたか?」

心配ないですよ、というリオの言葉で昨夜は部屋へと戻ったが、あの後きちんと戻ってきたのか気掛かりだった。

「はい、あれからずいぶん経ってから戻られたようです。今朝はまだ部屋で寝ていますよ」

「そうか。よかった」

「簡単なものでよければ朝食をご用意しますが、召し上がりますか?」

リオの提案に、あたしはいいや、とヴェラは外へ向かう。二日酔いの酷さがヴェラから食欲を奪っていた。

アッシュとディーンもこれ以上世話を掛けるわけにはいかないからと辞退した。


三人は店の中を見て回り、旅の間に消費したものを補充する。

「しかしまぁよくここまで商品が揃ったものだよ」

専門店ほどの品揃えではないものの、他の村の雑貨屋とは比べ物にならないくらいニコルの店は商品が充実している。

「前まではこの店ももっと小さかったんですよ」

リオが掃除の手を止め三人のそばへやってきた。

「ニコルさんのこと、自慢してもいいですか?」

とリオが笑顔で続ける。

「以前のカフ村は小さな村で、行商人もあまり立ち寄らない場所でした。それでも自給自足でなんとかやってきてたんですけど、昔この辺りで大雨があって、その時の土砂崩れで他の村との往き来ができなくなったことがあったんです」

もともと自給自足で最低限の蓄えしかなかったカフ村は土砂崩れによる交通の遮断で一時的に食糧難へと陥った。

折り悪く体調を崩していたリオの母親はその時に亡くなってしまったという。

「お父さんは旅に出ていましたから、ニコルさんが他の家に食料を分けてほしいって言って回ってくれたんですけど、どこも自分達の分だけしかなくて。だからそれは仕方なかったんです」

でも、その事があったからニコルさんは村を大きくすることを決めたんですと、リオは言った。


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