第11話
建物の一階にはいくつも棚が置かれ、食糧品から生活用品まで様々なものが並んでいる。
少女が立っている奥の台には台帳が置かれ、横には二階へと続く階段があった。
「店主の考えで一階は商店ですが、二階は宿になっています。ご宿泊でしたら今は空きがありますのですぐに部屋をご用意できますが、如何なさいますか?」
今までに何度も聞かれたことなのだろう、少女は涙を拭うとすらすらと案内を口にした。
「じゃあお願いしようかね。それと、お嬢ちゃんの名前はリオで合ってるかい?」
不意に名前を呼ばれた少女は少し表情を固くする。
「いや、こう見えて怪しい者じゃないんだよ」
ヴェラはおどけて見せ、アッシュに続きを促した。
「君のお父さんから預かってきたんだ」
アッシュは台の上にお金の入った革袋を置いた。
「本当はオーエンさんが自分で持ってくるはずだったんだけど、急な依頼が入ってしまってね。だから代わりに僕達が届けに来たんだよ」
とアッシュの言葉をディーンが補足した。
台から革袋を持ち上げ胸に当てた少女の顔は喜びと寂しさが混ざったものだった。
「お父さんのお知り合いの方なんですか?お父さんは元気にしてますか?お父さんはいつ帰ってきますか?」
矢継ぎ早に質問をされ三人は少し戸惑ってしまう、その時。
「お客様を困らせてはいけないよ、リオ」
宿屋の入り口から一人の男が入ってきた。




