表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
イシュト大陸物語  作者: 明星
啼泣
115/408

第10話

「前はこれで小麦二袋だったじゃないか!全く!ここでしか交換できないからって足元見すぎじゃないのか!」

男の怒鳴り声は尚も続く。

「こんなのは納得しないぞ!お前じゃ話にならん!ニコルの奴を呼んでこい!」

宿屋の中の怒鳴り声は、外まで丸聞こえだった。

怒鳴られている相手も途中途中に何かを言っているが、男の勢いに押されて言われるがままだ。


「まったく、めんどうだけどこのままって訳にもいかないね」

降ろしかけた荷物を荷台に戻し、ヴェラが何の躊躇もなく宿屋へ入っていった。

アッシュとディーンがそれを追って宿屋に入ったとき、既に男の怒りの矛先はヴェラへと向いていた。

「余所者が口を挟むな!」

近くで聞く怒鳴り声は物凄い。

「口を挟むつもりはないけどさ、あたし達も宿を取りたいんだよ。それにその、ニコルって人は今ここにいないんだろ?いない人間を待って時間を無駄にするくらいなら出直して来たらどうだい?」

ヴェラが頭を掻きながらうんざりした様子で答える。

「だから俺はニコルを連れてこいと言ってるんだ!」

「ねぇ、そのニコルさんは今ここに呼べるのかい?」

盛大にため息をついたヴェラに問い掛けられた少女は、目に涙をためたまま首を横に振った。

「ほら、無理なんだってさ。いい大人なんだから子供を困らせるんじゃないよ」

ヴェラの物言いに男は苛立つ。

「ば、馬鹿にしおって!」

大声をあげながらヴェラに掴みかかろうとした男の腕は、あっけなくアッシュに掴まれ押さえ込まれた。

男は唸り声をあげ腕を動かそうとするが、微動だにしない。

「ここは一度引いてもらった方がお互いの為だと思います」

そう言うとアッシュは男の腕を離した。

赤くなった腕をさすりながら、男は周りを睨み付ける。

勝ち目がないと悟った男は台の上の毛皮の束を掴み、大きな舌打ちと共に出ていった。


「大丈夫かい?」

「あ、はい、すみません、旅の方にご迷惑を掛けてしまいました」

まだ少し涙目の少女はそれでも気丈に振る舞っている。

「そんなこと気にしなくていい」

「ところで、ここは宿屋でいいんだよね?」

ヴェラが疑問に思ったのは建物の内装だった。

宿屋の一階は酒場になっていることが多いが、ここはどう見ても商店だったからだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ