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イシュト大陸物語  作者: 明星
啼泣
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第9話

看板に従い街道を左に曲がる。

村へと続く道はよく踏み固められており石なども取り除かれていた。

「意外と、っていうと失礼だけど人の往き来が多い村なんだね」

馬を歩かせながらディーンが呟く。

「さっきの看板のおかげなのかね」

ヴェラの言う看板とは街道沿いにあったカフ村を示す看板で、そこには大きな文字で「行商人歓迎」の文字が書かれていたのだ。

道を進み丘を登ると眼下に村が現れた。

広大な森の手前に広がるその村は、町ほどではないが村と呼ぶには不釣り合いなほど大きい。。

「ずいぶんと立派な村じゃないかい。これは酒にも期待できそうだね」

ヴェラはディーンから手綱を奪い取ると馬の歩調を早めて丘を下りていった。


オーエンの弟が経営するという宿屋の場所は丘から見下ろした際に見当がついていた。宿屋というだけあって他の建物よりずっと大きかったからだ。

村の中を進むアッシュ達に田舎特有の好奇の目が向かないことも、日頃から人の往来が多い証拠だった。

村の中心には広場があり何かの際に利用するのであろう舞台が置かれている。

その広場に面した一角に、目指す宿屋はあった。


ヴェラが宿屋の前に荷馬車を止め、荷物を降ろそうとした時、宿屋の中から男の怒鳴り声が聞こえてきた。

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