表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
イシュト大陸物語  作者: 明星
啼泣
110/408

第5話

「それはまた、何のつもりで?」

聞きながら、ヴェラの口許が弛んでいる。

「分かってるんだろ?俺がカティナを町まで連れていこうと思ったんだ」

アッシュの顔が赤くなり、すぐに連れ戻されたけどな、と呟いた。

「仕方ないよ。僕達はまだ子供で、何も知らなかったんだから。あの時はずいぶん長く歩いた気がしたけど実際はたいした距離じゃなかったんだと思う。僕たちを追いかけてきた大人達にあっという間に見つかってね、村に連れ戻されて大目玉をくらったよ」

特にすりこぎとまな板は剣と盾に見立てる為にアッシュが子供なりに改造した結果、二度と使えない状態になっていた。そしてアッシュはこの事で母親からぶたれるのだが、それは最初で最後のことだった。

ディーンの笑顔は懐かしいことを思い出すものへと変わっていく。

「子供の僕たちにとってはそれでも立派な冒険だった。その事があってから僕はアッシュやカティナと遊ぶようになって、徐々にみんなも一緒に遊ぶようになったんだ」

カティナをどうするかというのも、アッシュの突飛な行動のおかげですぐに決まった。

しばらくは村で保護して、次に行商人が来たときに彼らに託す事になったのだ。

行商人は少し前に来たばかりだった為、次に来るのはまだずいぶん先の話だ。しかし子供だったアッシュ達には、その時間があっという間に過ぎていくように感じられた。

「カティナはどんな子だったんだい?」

「カティナは」

とアッシュが口を開く。

「カティナはいつも笑顔だった。村に来た頃は表情なんかなくて、今にも消えてしまいそうに部屋の隅に座ってた。だけど、あの日、一緒に村を出たあの日から少しずつ明るくなっていったんだ」

「元気になってからのカティナはそれはいい子でね。最初は訝しんでた村の人達ともいつの間にか仲良くなってて、アッシュのお母さんなんか嫁に来ないかって言い出すくらいさ」

ディーンはあの時のあわてふためくアッシュの姿を思い出し笑うが、すぐにその表情が曇った。

「でもね、そうした楽しい時間はすぐに終わることになるんだ。竜が、来たから」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ