第59話
「さて、君達はこの後すぐに旅立つつもりなのかな?」
オーエンを見送ったカヴァルが棚へと向かう。
「装備の修理が終わり次第出発するつもりです」
アッシュ達はアーマードに戻るとまず鍛冶屋へ向かった。
今回の旅で用意した装備は身を守ってくれたかわりにボロボロになっている。
買い換える必要がなかったのは幸いだったが、それでも修理代は高く付いたし、破損状態から修理完了までは数日かかると言われた。
「では出発する時にまたここへ来なさい。その時に中央の冒険者組合へ渡す書類と預かっている石を返そう」
カヴァルの言葉でその日は解散となり、三人は組合を出た。
「カヴァルさん、きっと知ってるよね」
「人ではない人間が誰だったのか、か?」
オーエンの待つ酒場までの道は人気がなく、とても静かだ。
「知ってるだろうな」
カヴァルの態度のわずかな違和感を二人は見逃さなかった。
「だが隠してるわけではないんだと思う。きっと先生と同じで今は言うべきじゃないと思ったんじゃないかな」
長い坂を上ると、酒場が見えてきた。
「だとしたら無理に聞こうとするだけ無駄ってことだね」
「ああ、知るべき時が来れば嫌でも知ることになるだろうし、焦ることはないさ」
三人はオーエンの待つ酒場の扉をあけ、中へと入っていった。




