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イシュト大陸物語  作者: 明星
力の証明
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第58話

「緊急の依頼だって?」

冒険者組合に入ってきた男はアッシュ達の姿を見つけるとニヤリと笑った。

「おお、いつぞやの青年達じゃねぇか。オーガ討伐はうまくいったのか?」

アッシュ達もその男を覚えていた。

リザードマンに追いかけられたとき、助けてくれた冒険者だ。

「なんだ、オーエン君とアッシュ君達は知り合いなのかね」


アッシュはカヴァルに経緯を話し、改めてオーエンと名乗りあった。

その後第三中継基地で起こったことをオーエンに伝える。

「なるほど、話はわかった。特異個体、ってやつだな」

「うむ、おそらくは」

アッシュ達には初めて聞く言葉だった。

「話を聞く限りでは、おそらくアッシュ君達が倒したのはオーガの子供のようなものだ。ようなもの、というのは魔物に親子というのはないからだね」

カヴァルが魔物の生態について分かる範囲で教えてくれた。


森林、沼地、山岳、砂漠。全く環境の違う場所で同一の魔物が確認される、その事から魔物は子を産んで繁殖するわけではないと考えられている。

魔物の出生は謎だが、恐らく別の何かから生み出されているのではないか、とカヴァルはいう。

そして何かから生まれた魔物達はその環境に適応した体へと成長していく。

「以前アッシュ君達が倒したゴブリンの祈祷士、やつらは森林や沼地ではよく見られるが、山岳地帯や砂漠ではあまり見られず、逆にその地域に住まうゴブリンは肉体的に優れたものが多い。まぁこういった具合に同じ魔物でも少し違いがある」

そういった変化の中で、極めて稀に他とは違う強力な個体が出現すると言う。

「それらを特異個体、と呼んでおる。大陸中で既に何匹か特異個体の報告は上がってきておるが、人間に害をなすことがなければ基本的には放置されておるな。下手に手を出して人死にが出ては大変だ」

「今回は開拓途中でその特異個体にぶつかっちまったから、倒すしかないってことだな」

「ふむ、オーエン君、頼めるかな?」

「わかった。ただし俺達四人でやるには荷が重そうだ。他の冒険者にも声掛けても構わないよな?」

「もちろんだ。確実に討伐できる方法で頼むよ」


話がまとまり、オーエンは酒場に戻る為立ち上がる。

「俺達はまだしばらく酒場にいる。後から来てくれないか、渡したいものがあるんだ」

アッシュ達にそう伝えると、オーエンは冒険者組合を後にした。


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