目撃者は拘束しとかないと。
「たっだいまー。」
「……お邪魔します。」
マンションの扉を開けると、見慣れた部屋が目に入る。
僕が玄関に上がると、彼女はなぜか外に突っ立ってたままでいた。
「なに?どしたの?」
「……なんか、驚きました。」
「ん、何が?」
「結構普通のところに住んでるんだな、と。」
「なに?廃ビルとかにこそこそ部屋作って住んでるかと思った?そんな堂々と犯罪者じみた生き方しないよ。」
いいから早くあがって、と言って、目の前の少女を部屋へと入れる。
リビングに上がった少女は辺りをキョロキョロ見渡しながら、なぜか端っこに突っ立ってた。
「適当に座っとけばいいよ。勝手についてきたくせに何遠慮してんの?」
「……じゃあ、お言葉に甘えて。」
そう言った少女は、部屋の真ん中に置かれたソファへと控えめに座る。
僕はそんな彼女は気にせず、自分の作業を進める。持ってきたナイフを鞄から取り出すと、それを水道の水で洗い流した。
ちょうど新しい包丁欲しかったとこなんだよね。
ちょっと小さいけど、まぁいいか。
そのナイフを台所の棚にしまうと、リビングへと戻る。
「はぁー、疲れた。」
「………」
隣に少女が座ってるのも気にせず、ソファにどしりとなだれる。
外に出るのは本当にめんどくさい。
まぁ生活用品や食料品がないと不便だから仕方なく出かけるけど。
でも帰り際になると大体事件を起こして帰るのだ。それが面倒で疲れる。
なら何もしなければいいのに、と言われそうだが、仕方ないんだよ。
だって衝動は抑えられないんだから。
スマホをいじくって最近のニュースを調べてみると、過去に自分が関わった事件がいくつか上がっていた。
さっきのは流石にまだ上がっていないようだけど。
さて、もう遅いしシャワーでも浴びて寝よう。
そう思って席を立っても、彼女は相変わらず何も言わずにぽつんと座っている。
僕は特に気にせずそのままシャワーへと向かった。
ー数十分後ー
シャワーを終えてリビングへと戻ると、彼女は変わらずソファに座っていた。
だが俯いていたさっきの座りかたではなく、背もたれに寄りかかるようにして座っている。
気になって近づいてみると、小さな寝息が聞こえた。
「すぅ……」
「なんだ、寝ちゃったんだ。」
彼女が寝たのを確認すると、僕も自室へと向かった。
さてじゃあ寝よう、というわけではない。
棚から縄を取り出して、再びリビングへと戻る。
「まぁ、念のためね。」
彼女をソファへと押し倒し、両手を頭の上にして縄で縛る。両足も足首のところで縄で縛った。そして口にはガムテープを貼る。叫ばれて近所に聞こえちゃったら困るからね。
「よし、と。」
彼女は一応目撃者だ。
もし彼女が起きて逃げ出して警察に通報でもされたら住所が一発でバレてしまう。
まぁ、そんなこと彼女はする気ないだろうけど。
拘束し終えた彼女を一見してみる。
まぁなんというか、卑猥な格好してるね。
縛った自分がいうのもなんだけど。
白いワンピースを着た若い少女が縄で縛られて横たわっている。
高校生ぐらいだろうか?
おそらく自分よりはいくつか下だろう。
顔もよく見ると整っているし。
ソファーに散らばった黒いロングヘアーを手で掬ってみると、さらさらと指の間を零れた。
それに肌だって真っ白だ。縄で縛られたところは少々赤くなってはいる。
多分、男性だったら大分そそられる光景なのかもしれない。
だけど残念、僕はなんにも感じない。
ただ卑猥だなぁ、としか思わない。
まぁ性欲がなくて不便しているわけでもないから別段気にしていないが。
それよりもう寝よ。
再び自室へ戻ってベットに入る。
いつ死ぬのかな、彼女。
自分に殺してくださいと言ってきたあの時の顔を思い浮かべながら、ゆっくりと意識を手放した。